詩人イェイツの「夢」についての記述

W.B.イェイツ『ヴィジョン』- 審判を受ける魂、より

 

われわれが、通常の睡眠において心象を見るのは、自身の過去に関係のあった人びとなのではなく、一般の死者たちの《夢見回想》がもとになっている。

夢が混乱するのは、そのほとんどの場合、現れるイメージは誰か未知の人から出ているのに、感情、名称、ことばづかいは自分たちだけに通用するものだからである。

何年か自分のみる夢をずっと観察してきてわかったのだが、夢をことばによって見ているかぎりでは、たとえば、私の父は背が高く顎ひげをはやしていたのを知る。

ところが、夢にイメージをみるときは、目覚めてすぐその夢を検討してみると、夢の中の父は腰掛けとか、望遠鏡の接眼レンズとかで表されていて、自然のままの姿をしていたためしはない。

つまり、われわれは睡眠中、具体的な記憶は捨て去っている(われわれに作用する「記録」との接触がなくなる)が、抽象的な記憶はとどめていることになる。