新型出生前検査、対象拡大へ…不安持つ妊婦にも容認
読売新聞 2022/01/31
妊婦の血液から胎児の病気を調べる「新型出生前検査」について、国や関連学会などが参加する運営委員会の作業部会が、対象となる妊婦の要件を拡大する案をまとめたことが分かった。
年齢を問わず、胎児の病気に不安を持つ妊婦にも認める。検査を受ける全ての妊婦にカウンセリングの機会を確保する狙いがある。31日の運営委員会の会合で議論し、今春以降の実施を目指す。
検査はダウン症など三つの病気の可能性を調べる。人工妊娠中絶につながる倫理的な課題があるため、日本産科婦人科学会(日産婦)が指針を作り、高齢の妊婦や、超音波検査で胎児の病気の可能性が示された人などに限って認めていた。
運営委員会で議論する新たな案では、正確な情報を伝え、妊婦の選択を支援する「遺伝カウンセリング」を条件に「胎児の病気に不安を持つ妊婦」にも認める。
実施施設も増やす。これまでは出産に対応できる大学病院を中心に認定されてきたが、出産する施設と連携した不妊治療クリニックでの実施も認める。その場合、臨床遺伝専門医か、出生前検査に関する研修を受けた産婦人科医の常勤が必要となる。
検査の前後には、遺伝カウンセリングを実施し、病気が見つかった場合に出産するかどうかなどについて、相談に応じる。
検査を巡っては、近年、指針に基づかない認定外施設が急増し、トラブルも発生。国が参加する運営委員会で、新たなルールづくりを急いでいた。
今回の新たな案は、事実上、新型出生前検査を希望する妊婦全てに門戸を開くものだ。これまでは若年の妊婦は原則認められていなかったため、認定外施設で検査を受け、十分な支援が受けられないケースが問題となっていた。
定外には美容外科など専門外の施設が多い。「胎児の病気の可能性がある」との検査結果を郵送だけで知らされ、相談に応じてもらえず、妊婦が混乱するトラブルも報告されている。
認定外の数は昨年の時点で全国138施設とすでに認定施設(108施設)を上回る。国内の検査数は推計で年間約3万6000件とされているが、半数以上が認定外で行われているという調査結果もある。
今回の案では、不妊治療クリニックなどにも認定を広げ、妊婦がカウンセリング体制の整った施設で検査を受けやすくなることが期待される。
ただ、認定外では安価だったり、三つの病気以外も調べられたりすることを売りにしている場合もある。認定外への流れをどれだけ食い止められるかは不透明だ。検査は、産むか、産まないかという重要な決断に関わる。カウンセリングの大切さを妊婦に理解してもらう情報提供が欠かせない。