(コメント)最近、昔の知り合いなどと会うと、「初めて会ってから40年 (@_@)」ということに気づくこともありまして、自分も長いことないなあ、とか思う部分もあり、寝る前に思い出投稿をしようと思います。
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Whitehouse – Ripper Territory (1981)
これはですね……。1984年くらいでしたかね。当時まだ在籍していた東京の学校の生協で、月に 1度だったか、古本と古レコードのバザーがあってですね、そこでこの Whitehouse の「Dedicated to Peter Kurten (ペーター・キュルテンに捧げる)」というアルバムが 200円だか 300円で売られていて、それをジャケ買いしたのです。
もちろん、この音楽ユニットが誰かは知らなかったです。
ただ、ジャケットに描かれていたのは、ペーター・キュルテン(Wikipedia)という「デュッセルドルフの怪物」といわれていた 1920年代の連続殺人犯の写真だったのですね。
アルバムのジャケット
私は中学生の時にメンタルに異変を感じたことがあり、「ああ、オレは気が狂っちゃうんだろうなあ」と、岩見沢市の図書館に通いまして、「発狂する過程はどんなものなんだろう」と、精神医学の書籍を毎日のように読みに通う日々があったんです。
このことは、ずいぶん以前の In Deep の「チャールズ・ホイットマンの亡霊」という記事の途中でふれていますが、そのうち、読む精神医学の本がなくなってきて (田舎の図書館は専門書の数が少ない)、同じ並びの棚に「犯罪コーナー」というのがありまして、そこに、作家コリン・ウィルソンの『殺人百科』 (1963年)というのがあったんですよ。
そこに、このペーター・キュルテンの項目があったんです。こちらのどなたかの記事でちょっとふれられていますね。
「ペーター・キュルテンがジャケットかあ」と、なんとなく生協でそのレコードを買っちゃったはいいけれど、これが、もうどうしようもならない「ノイズ」で、その頃は、まだ、きちんとしたノイズはあまり聴いたことがない頃でしたので、「なんだこれは?」と思いましたけれど、同時に、当時の私は、すでにパニック障害だったんですね。
しかも、このレコードを買った時期は、梅雨時。
薄暗い気候の中で、どうにもならないノイズを聴いていて、
「オレの東京の生活はどうなっちゃうんだろう」
と思いながら、苦しみながら聴いた記憶があります。
しかし、人間の被虐性というのは、なかなかおさまらないもので、その後もホワイトハウスのアルバムを、いろいろと聴いたりしている始末でした。
確かにノイズという音楽ジャンルの代表的な人たちではありますけれど、英語版 Wikipedia を見ますと、
> ホワイトハウスは、自称「エクストリーム・エレクトロニック・ミュージック」を専門としていた。彼らは、ピーター・カーテンやデニス・アンドリュー・ニルセンといった悪名高い連続殺人犯の視点からサディスティックなセックスやレイプを描いた物議を醸す歌詞やイメージで知られていた。後期の作品では、摂食障害や児童虐待といった他の形態の暴力や屈辱の心理学を探求した。
という人たちで、「悪の思想」に貫かれていた表現でした。
まあしかし、いろいろな音楽への「耐性」をつけてくれたという意味では、思い出深いですね。
以下が、その生協で 200円で購入したアルバム Dedicated to Peter Kurten の最初の曲「リッパー・テリトリー」です。一応貼っておきますが、お聴きになる必要はまったくないです。
でも、20世紀の終わり頃からは、彼らもリズムというようなものを取り入れて、聞きやすくはなりましたけれど、それでも、やはり思想は同じものでした。
とはいえ、思想的に(あくまで「思想的に」という意味で)アンダーグラウンドを突き詰めるということがどういうことか教えてくれたものではありました。
今でも、梅雨空の下で、これを聴きながら苦しんでいた二十代前半の自分の姿を、今となっては微笑と共に思い出します。