「英紙が日本の地方銀行の預金大量流出を懸念」という報道





英紙が日本の地方銀行の預金「大量流出」を懸念

courrier.jp 2024/07/11

巨額の資産を簡単に移動する高齢者たち

新興ネット銀行の台頭により、地方銀行からの顧客離れが特に高齢者の間で進んでいるという。英紙「フィナンシャル・タイムズ」がその背景と、地銀の経営不振が日本経済にもたらす影響を関係者に取材した。

2024年6月、日本のソニー銀行は円の預金の金利が最大10.52%になる期間限定の定期預金プログラムを開始した。20年近くも預金の金利がほぼゼロだったこの国で、この利率は驚異に値する。

日本の地方銀行の多くは、ネット銀行との熾烈な競争によって自行の預金が流出する可能性に頭を悩ませている。

折しも海外金利の上昇と国内のマイナス金利政策の終了によって、銀行が保有する資産価値の目減りや、リスクの高い借り手が財政危機に陥る可能性が高まっている。

日本に62ある地銀と250以上ある信用金庫は、以前から少子化と大都市圏への人口集中の問題に苦しんでいた。これに預金流出が加われば、いよいよ立ち行かなくなるかもしれない

地銀のひとつ、しずおかフィナンシャルグループの柴田久社長は、5月に開催した2023年度の決算説明会において、ネット銀行に小口預金の一部を奪われている点を認め、預金の流出を抑制する取り組みを強化すると約束した。

同じく5月には東北地方で2つの地銀を経営するじもとホールディングス(HD)が、3月期決算で過去最大となる234億円の赤字を計上。公的資金の返済に行き詰まり、事実上、国の傘下に入った。

じもとHDは、欧米諸国の金利が数年前と比べて大幅に上昇したために外国債券のポートフォリオが打撃を受けたと、大赤字の理由を説明した。借り手である日本企業の経営悪化も要因のひとつだという。

これから、じもとHDのようなケースは増えるかもしれないと、ある地銀の頭取は言う。

「日本の金融システムはいまのところ安定していますが、当局は危機感を持っています。リスクがあると判断された金融機関は、すぐにその芽を摘まれるでしょう

 

預金を簡単に移動する高齢者

これまでも投資家や格付け機関、規制当局は地銀の資産の脆弱性に関心を向けてきたが、預金の流出はそれほど懸念されていなかった。だが、日本のネット銀行の口座開設数と預金額は急激に増加している。

アナリストによれば、日本の高齢者が成人した子供の手を借りてネット銀行に口座を開設するケースが増えている。こうした状況は、高齢者を顧客に多く持つ地銀の経営を脅かしているという。

投資銀行キーフ・ブリュイエット・アンド・ウッズの日本銀行アナリストであるデビッド・スレッドゴールドは、地銀の顧客の多くがネット銀行に乗り換えたのは、「預金を簡単に移動する偉大な能力」を手に入れたからだと指摘する。