小説『イルミナティ』より米国三大ネットワークの名称の由来

 

小説『イルミナティ』第九のトリップより

 

「ちょっと訊きたいんだが、カートライトさん、バヴァリア古代光明幻視者会という名の秘密結社について何か知っているか?」

「ああ、似たような名前の組織を三つ知っている。古代バヴァリアの陰謀(ABC)」、新しいバヴァリアの陰謀(NBC)、それに保守的バヴァリア幻視者会(CBS)」

ジョーはうなずいた。カートライトは事実を正しく認識していないようだ……ジョーと同じようには。この小男はパズルのピースを持っているかもしれないが、ピースの数はジョーの手持ちより少ないかもしれない。それでも、互いのピースが違えば、役に立つだろう。

「それぞれの組織が、合衆国の大手テレビ局を一つずつ牛耳っているんだ」カートライトはいった。「各テレビ局の名前は、頭文字が親組織をさすようにつけられている。三つの組織は主要な雑誌と新聞もすべて支配しているんだ」

…「わたしがあんたに会いにきた理由はそれさ。最近あんなものを出版したのに無事にでいるところを見ると、あんたは自分の雑誌がイルミナティに支配されないようにしただけではなく、非常に強力な防御策も持っているようだ」

「つまり、それぞれ独立したイルミナティ組織が三つあり、その三つの組織でメディア全体を支配している……そういうことかね?」ジョーはいった。

「そのとおり。…映画業界も支配下にある。何百という映画に手が加えられているよ。なかでも有名なのは『ガンガ・ディン』(十九世紀のインドを舞台にした冒険活劇)と『市民ケーン』だな。この二作はとりわけイルミナティに関連したことがらや、暗号、サブリミナル効果による宣伝だらけだ。例えば、『市民ケーン』の台詞に出てくる”薔薇の蕾”は、いちばん古いイルミナティの象徴、いわゆる”薔薇十字”を表す暗号名だ。どういうことかな」カートライトは嫌らしい忍び笑いを漏らした。

「学者のホーレス・ネイスミスは、『ガンガ・ディン』の分析を執筆中で、殺人教団タギーや血の女神カーリー、蛇でいっぱいの穴、象に与えるための薬、寺の塔のてっぺんでラッパをふくことなど、そのほかにもいろいろなものの本当の意味を指摘しているよ。『ガンガ・ディン』は、悪と混乱の女神を信奉する犯罪者たちの手で恐怖に陥った土地に、法と秩序が課せられることを祝福したものだ。タギーは、ディスコルディア運動(ギリシャの争いと不和の女神エリスに捧げられた宗教)を戯画化したもの、イギリスのイルミナティの目から見た自分たちの姿を表すもの。イルミナティはあの映画が大好きなのさ」

「われわれみんなが何らかの形で彼らのために働かされているのではないかと思えることもあるが」ジョーはあえてあいまいな発言をして、カートライトがどちら側の人間か見極めようとした。

「そうとも、動かされてるんだ。人類の団結を乱すような行動はどんなことも、イルミナティの役に立つ。連中は大勢に苦しみや死をもたらす実験で永遠に社会を揺さぶりつづけるつもりだからな。例えば、1904年6月15日に起こったジェネラル・スローカム号の水難事故(アメリカ同時多発テロ以前では最大の死亡者を出した人災)がいい例だ。ところで、19と4を足すと23になるのに気付いたかね」