[米国産とうもろこしの作柄が悪化、食肉のコスト高要因に]という記事

 

(※) 米国農務省のレポートの内容はこちらにあります。


米国産とうもろこしの作柄が悪化、食肉のコスト高要因に

小菅努 2022/08/28

北半球ではとうもろこしが受粉期を終えて、穀粒の形成から成長を促すステージに移行している。収穫期が徐々に近づいているが、こうした中で気になるデータが穀物調査会社Pro Farmerから発表された。

同社は8月22~25日の日程でイリノイ、インディアナ、アイオワ、ミネソタ、ネブラスカ、オハイオ、サウスダコタの畑でサンプル調査を行い、26日に2022年の米国産トウモロコシのイールド(単収)と生産高見通しを発表したが、8月12日に米農務省(USDA)が先行して発表していた数値と大きく異なる結果になったのだ。

Pro Farmerは、イールドを168.1Bu/エーカー、生産高を137.59億Buと発表している。一方、USDAはイールドと175.4Bu、生産高を143.59億Buと発表していた。Pro Farmerの生産高見通しはUSDAのものを4.2%下回っており、USDAの見通しが今季の天候リスクを十分に織り込んでいなかったのではないかとの警戒感が広がっている。

USDAも、8月の需給報告で生産高見通しを145.05億Buから143.59億Buまで引き下げているが、下方修正幅が保守的だった可能性が高まっている。

Pro Farmerの担当者は、「乾燥した西部地区で失われた生産高を東部地区で相殺できるか」が今年の焦点だったが、「答えは、明らかに不十分だった」と報告している。

西部地区のイールドは、サウスダコタが前年比12.9%低下、ネブラスカが13.7%低下と予想されているが、東部地区のオハイオが7.9%低下、インディアナが11.5%低下など、ミネソタを除く全ての調査地域でイールド見通しは下振れしている。

仮にPro Farmerの予測値の方が現実に近い場合には、USDAは今後生産高見通しの大幅な下方修正を迫られ、米国産とうもろこし需給見通しは想定以上に引き締まるリスクが高まる。

とうもろこしというと、日本人は焼きとうもろこしやサラダに使う缶詰などをイメージし易いが、実際の消費は主に家畜の餌となる飼料であり、米国産とうもろこしは米国内の畜産業での使用はもちろん、日本も含む世界各地に輸出されている。

日本の場合だと、配合・混合飼料の47.1%(2021年度実績)がとうもろこしになり、その大部分を輸入しているため、とうもろこし価格が上昇すると米国産牛肉や豚肉価格の値上がりに留まらず、国産の牛肉や豚肉価格も上昇し易くなる

まだ収穫期までは時間があるために作柄環境が改善する余地も残されているが、シカゴのとうもろこし先物価格は7月22日安値から既に最大で19.4%値上がりし、約2カ月ぶりの高値を更新している。今後1、2カ月の気象環境の重要性が高まっている。