コロナの期間に激増した薬剤耐性菌

 

(※) しかし、アメリカのコロナの治療で「8割が抗菌薬を使っていた」というのはすごいですね。まったく効果がなくとも、どんどん処方する。以下は、7年前の記事ですが、これがさらに拡大しているということになりそうです。

[記事] バクテリアが人類に勝利した日:「最終救済薬コリスチン」を含めた「すべての抗生物質が無効」のウルトラ耐性菌が猛スピードで全世界に拡大している
In Deep 2015年12月7日


「今の人類の“最強の武器”にも耐性を持ってしまいお手上げ状態」コロナで増加した「薬剤耐性菌」医師が明かす“最初のパンデミック”

ABEMA TIMES 2022/08/27

医療体制のひっ迫に、後遺症。私たちが健康に暮らすうえでの大きな不安要素となっている新型コロナウイルスについて、アメリカで新たな懸念を示す調査結果が報告された。それが、薬剤耐性菌の存在だ。文字通り、抗菌薬などに対する耐性を持った菌のことで、薬が効きにくくなることで治療が難しくなるといった特性がある。

CDC(=アメリカの疾病対策センター)は、新型コロナウイルスによる薬剤耐性菌への影響について調査。2020年の新型コロナウイルスの感染拡大がピークに達した後の状況を分析した結果、7種類の病原体で、薬剤耐性菌の院内感染例が全体で15%増加していたことが明らかになった。

また、報告書によると、パンデミックが始まった年の1年間に2万9400人以上の人が、医療関連の薬剤耐性菌の感染が原因で死亡。新型コロナウイルスの流行による混乱でデータが入手しにくくなっていたため、この死者数は更に多い可能性もあるとしている。

こうした「薬剤耐性菌」とは、どのようにして発生したのか。この疑問について『ABEMAヒルズ』に出演したレニック医師は「使った抗菌薬に少しだけ耐性がある細菌が人から人に感染していく中で増えてしまった」と説明した。

レニック医師「私たち人間は常に細菌と戦っている状況です。大正時代とかだと子どもでも大人でもこの『細菌の感染』によって死んでしまうことが日常茶飯事でした。その後、20世紀に“魔法の薬”ができたのです。それが『抗菌薬』というものです。飲むと細菌がなくなるという治療薬でしたが、残念ながら、最近ではその抗菌薬が効かなくなるように細菌が進化しているのです」

「どうしてそうなったかというと、実は抗菌薬を使えば使うほど細菌が『耐性』を持つようになるからです。感染しているときにも体には何億もの細菌があり、突然変異などによって、少しだけ耐性がある菌が残ってる状態なので、抗生剤を飲むと使った抗菌薬に耐性を持った菌だけが生き残る状態になるのです。そして、そこから増えた菌が他の人にも伝染ったり……。特に病院ではその過程が繰り返されて“薬剤耐性菌”が増えているという状況です」

「薬剤耐性菌が増加している」。そう話すレニック医師は、コロナ禍で薬剤耐性菌が増えたことについて「コロナウイルスには効果がないのに抗菌薬を使ってしまっていた」と、最初のパンデミックの状況を振り返った。

レニック医師「CDCの発表にあったように、アメリカではコロナ患者のうち、8割が抗菌薬を使っていました。実はコロナは、ウイルス性感染としては全く抗菌薬が効きません。それでも抗菌薬を使ってしまっていた状況があり、その抗菌薬の使いすぎが問題です。その当時も医療のひっ迫などがあり、『本当に抗菌薬を使うことが適切なのか』という判断ができていなかったかもしれませんが、この過剰な使い方によって耐性菌が増加したのです」

抗菌薬を適切に使用できなかったことが薬剤耐性菌を増加させてしまった。

こうした薬剤耐性菌への対策が後退している状況について、CDCの抗菌薬耐性調整・戦略ユニット長のマイケル・クレイグ氏は「我々が対策を怠れば“薬剤耐性菌”の拡大は止まらない」と強い危機感を示した。

こうした報告について、レニック医師は「私も一言で言うと『怖い』です」と同意を示す。

レニック医師「私たちは昔『ペニシリン』という抗菌薬を使っていましたが、耐性菌が溢れてしまい、使う場面は極端に少なくなりました。その後もう少し強い武器、強い抗菌薬を使いますがそれにも耐性を持つ菌が増え、まるで“いたちごっこ”のようになっています。そうした段階を踏んでいった現在の耐性菌は、先程CDCの発表にもあった『カルバペネム耐性』や『バンコマイシン耐性』など、“今の人類の最強の武器”にも耐性を持っているということです」

「これは、例えるなら人間と宇宙人が戦争しているときに原爆耐性を持った宇宙人が出てくるような本当にお手上げ状態なのです。薬がどんどん強くなっているものの、それにも耐性ができて効かなくなってしまうかもしれないという怖さがあります」

現在の耐性菌はお手上げ状態と明かしたレニック医師。今後の対策として「なんとなくで抗菌薬を使うのではなく、適切なタイミングで適切な症状に使用してほしい」と考えを話した。

レニック医師「命に関わる状況とは全く関係ない、風邪症状があるときでも『早く治らなきゃ困るので抗菌薬をください』という患者が多いです。ですが、風邪を治す薬というものはそもそも存在せず、全て対処療法なのです。それでも『どうしても抗菌薬を出して欲しい』という患者がいると、絶対に抗菌薬が必要ない場合だとしても薬を処方してしまったというケースがCDCのデータでも3割あります」

「抗菌薬は、貴重な存在で最小限に使うことが重要だという意識が重要です。メリットばかりに目を向けるのではなく、デメリットにも目を向けて適切な使用を心がけて欲しいと思います」