楳図かずおさんが亡くなったという報道を見まして、まあ、お年的には 88歳ということで、十分に全うされたと思います。
この楳図かずおさんの報道だと、「漂流教室」とか「まことちゃん」とかがほぼ出てくるんですけど、私が最初にトラウマにハマりそうになった楳図さんの作品は、小学生のときに読んだ『のろいの館』(後に「赤んぼう少女と改題」)という 1969年に発表された作品が出てくるのですね。
ストーリーとかはこのようなサイトなどにありますが、美少女の姉が自宅に帰ってきた際に、そこには「存在が知られていない姉」であるタマミさんという人がいて…まあ、今でいえば、早老症などの範疇なんでしょうけれど、赤ちゃんの姿形のまま大人になっていっている少女で、その絵柄が非常に醜悪に描かれていましてね。
内容的にはホラー的な話なんですが、小学生の私が心を打たれたのは、その美少女の妹を攻撃しつつも「自分もあのように美しくなりたい」と、リボンをつけたり化粧とかするんですよ、タマミさんが。
ところが、化粧をすると、さらに醜悪な感じになっていく。
それを鏡で見ているタマミは「涙」を流すんです。しかし、涙を流した後、アーハハハと笑って、姉への攻撃をさらに行うことを決心するんです。
ネットで探したらありました。このシーンですね。
のろいの館より
umezz-art.jp
私は小学生でしたけれど、このシーンを見て泣きましてね。
「醜いものはどうやっても浮上することはできないのだろうか」
とか思いました。
同時に、「タマミの哀しさ」を、まあ、このシーンだけですけれど、描いていたことに感銘を受けました。
この作品は、当時、小学生くらいだった多くの子どもにショックを与えたと見られまして、音楽家の大槻ケンヂさんのバンドである筋肉少女帯というのがあるのですが、1980年代に「マタンゴ」というタイトルの曲で、タマミを連呼されていました。以下のような歌詞で、私もこのレコードかなんかを持っていました。
筋肉少女帯 – マタンゴ 歌詞
呪いの館には行っちゃいけねえ
呪いの館には行っちゃいけねえ
くどいようだが行っちゃいけねえ
呪いの館には行っちゃいけねえ
それでも行くというならば
俺を振り切り行くならば
呪いの顔に気を付けて
今すぐ君を狙ってる
タマミ タマミ タマミ タマミ
以下がその曲ですね。
この歌にも、タマミの哀しさへの想いが、やや入っていると思います。
ちなみに、タイトルの「マタンゴ」というのは、1963年(私が生まれた年)の東宝の映画で(YouTube)、これもまた子どもたちにトラウマを植えつけた映画のひとつでした。
とはいえ、子ども時代の多くのトラウマを与えてくれた数々の漫画や映画の作品群に感謝いたします。子ども時代の恐怖体験は、おそらく大事です。
ちなみに、楳図かずおさんは、私が東京の西荻窪に住んでいた頃、うちのすぐ近くの整体か何かに通ってらしたようで、たまに道ですれ違うことがありました(ずっとあの赤白の服なんですぐわかるんです)。
すれ違うときは、私は必ず「楳図さん、おはようございます」と声をかけていました。