「リーマンショック時以上の衝撃だ」:農林中金の事案に対しての農林水産省OBの発言





農林中金「投資モデル崩壊」でJAグループ共倒れ危機

ZAITEN 2024年8月号

「米リーマン・ショック時以上の衝撃だ。農林中央金庫(農中)に依存する収益構造そのものが成り立たないことが明白になった」(農林水産省OB)。

JAバンクの総元締め、農中が外国債券の運用で2兆円を超える含み損を抱え、2025年3月期に1兆5000億円以上の最終赤字に転落する見通しが明らかになると、全国の農協関係者や農水省幹部らは騒然となった。

巨額赤字はリーマン後の09年3月期以来16年ぶりとなるが、今回はハイリスク・ハイリターンを求めて米証券化商品への投資を焦げ付かせた当時とは事情が異なり、「安全資産」とされる米国債を中心としたオーソドックスな外債投資で失敗しただけに事態は深刻だ。  

米国のビジネススクール留学組を中心とする農中のエリート部隊が全国の農協から委託された約60兆円の資金を高度なノウハウで運用し、年間3000億円に上る手厚い利益還元で応える――。この投資モデル自体が崩壊したことを意味する

窮地に陥った農中はJAグループに1兆2000億円もの資本増強支援を求めた一方、出資への配当金や預金に対する奨励金(上乗せ利息)を大幅に削減するのが不可避の状況だ。

本業の農業関連事業で赤字を垂れ流し、経営基盤が脆弱な農協の経営危機への波及も避けられそうにない。