二十代によく聴いていた曲(28) – バットホール・サーファーズ – JIMI (1988年)

(コメント)最近、昔の知り合いなどと会うと、「初めて会ってから40年 (@_@)」ということに気づくこともありまして、自分も長いことないなあ、とか思う部分もあり、寝る前に思い出投稿をしようと思います。

Butthole Surfers / JIMI (1988)

20代の中盤頃、私はそれまで self23 という男性だけの表現団体をやっていたのですけれど、ふと、

「女性だけが出る美しい舞台を作りたい」

と思うようになり、企画しました。

それで、それ以前の self23 のチラシに「女性の出演者募集」という広告を載せまして、それと共に、私の知っていた女性の方々にも声をかけて、5人の若き女性による舞台が始まりました。

募集に応じた方の中には、15歳というような少女もいて、華やかといえば、華やかなんですが、話の内容としては、

「文明が滅亡した後に、過去を懐かしがる女性たちの会話」

に終始していたものでした。

全員真っ白の衣装を着て、空から血の雨が微妙に降り続ける空間で、ああだこうだと言い続けるだけの話です。

舞台は高架的になっていて、その下には血の川が縦横無尽に流れています。

その上で、かわいらしい女の子たちが、ウフフとか言いつつ、世間話をしているという、まあ、訳がわからないといえば、訳のわからない公演でした。

私には、「女性は汚れてはいけない」という宿命的な強迫観念がありまして、あるいは、古代キリスト教的な、「女性は、肌を露出してはいけない」という強迫観念もあり(これは今に至るまで同じですが)、女の子たちが可愛いまま、そして、(物理的に)一切汚れることなく美しいまま、「この世の血みどろの終わり」を描かなければいけないという感じのものでした。

悩んだのが音楽でした。

客入れ(公演前にお客さんが観客席に入るとき)では、以前にこのコーナーでご紹介したことのあるノイズ化した鎮魂曲であるチャールズ・ヘイワードさんの For Those In Peril On The Sea というのをかけました。

そして、公演のオープニングシーンでは、スウェーデンのフォン・サムラという人たちのハルユンタという曲をかけました。

ほとんど理想に近い始まりだったと今でも思います。

しかし、

「ラストはどうしよう」

というのが、ずっと決まらなくて。

それで、self23 にいた音楽に詳しい人に、

「なんか悪魔的な曲ってない?」

とききますと、

「こんなんならありますけど」

と、持って来てくれたのが、アメリカのバットホール・サーファーズというバンドのヘア・ウェイ・トゥ・ヘブンというアルバムでした。

そのアルバムの 1曲目を聴いたときに、「これだ」と思いまして、舞台の最後の台詞と同時にかけるに至った次第です。

「無垢に対峙する悪」というような意味合いでしょうか。

バットホール・サーファーズは、すでに有名なバンドだったらしいですが、私は知りませんでした。

以下の曲です。

12分以上ある長い曲ですが、その前半の部分です。

その舞台のラストの台詞は今でもおぼえています。

それは実に実に美しい少女ふたりが、

「世界の終わりってきれいね。夢を見ているようだわ」
「うふふ」

というものでした。

「うふふ」と同時にこの曲を大音量でかけたのでした(音響操作は私自身がやっていました)。

40年くらい前の話です。

ちなみに、「こんなもん、歌詞なんかわかりようがねえよな」と思っていたのですが、この記事を書くにあたって、調べてみますと、海外の歌詞サイトに歌詞が普通に掲載されていました。

今、はじめて歌詞の意味を知ったのでした。

わりと、当時の自分の希望にあった歌詞の内容だったのだと今にして知ります。

それを載せて締めさせていただきます。


Butthole Surfers / JIMI 歌詞

オレは汚れている
オレを汚してくれ
すべてを汚してくれ

ああ、神様

オレは1000万マイルもやって来て
お前の地球を旅してきた
そしてその燃える獣の手で、
私の誕生を完結させるかもしれない

イナゴ、ハエ、不快な獣が海底を割り
燃える手に命を与え、それが扉を開ける

おお、ダッド
傷ついた心
私の心はもう限界だ

希望は失われた
お前は出血している
お前の夢は永遠に悩まされる

現実について何を知っている?
オレは現実だ
死について何を知っている?
オレは死だ

オレはお前が見たものを知らない
そしてオレはオレが感じるまま
でもお前はオレを失ってしまった

さあ行こう

オレが見た光景をお前は知っている
お前の顔は頭を下げ、血のように赤くなっている
オレは今逃げる
お前が来たら、オレは立ち去る

クレイジー、クレイジーなクソ世界
オレたちが生きているのは本当にクレイジーな世界だ

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