緑茶からカテキンの分離抽出を最初に成功したのは100年ほど前の日本人女性だった

 


<新型コロナ>世界が「緑茶」を知ったのは、辻村みちよのおかげ

Newsweek 2021/11/16


緑茶の研究に奮闘した辻村(1930年、東京)

緑茶の成分カテキンを世界で初めて発見。日本初の女性農学博士である辻村の功績を機に、緑茶の北米向け輸出量は大きく増加した

何かの記念日や有名人の誕生日にちなんだイラストにGOOGLEの文字を潜ませる「グーグル・ドゥードゥル」。

その9月17日版に、日本の生化学者が登場した。緑茶の成分を世界で初めて解析した故・辻村みちよだ。

辻村は1888年、埼玉県生まれ。16歳で尋常高等小学校の補助教員となるが、後に東京女子高等師範学校(現・お茶の水女子大学)に入学し科学者の道を歩み始めた。

入学を希望した北海道大学ではまだ女性の入学が許されていなかったため、農芸化学科で無給の助手となった。

やがて理化学研究所に移り、三浦政太郎との共同研究で緑茶にビタミンCが含まれることを発見する。

1929年には世界で初めて、緑茶成分からカテキンの分離・抽出に成功。翌年にはタンニンの分子構造を解明し、結晶状態で抽出した。この2つの成分はポリフェノールの一種で、苦味や渋味をもたらすことで知られる。

ビタミンCを含む緑茶の成分を辻村らが特定したことで、緑茶の北米向け輸出量は大きく増加したという。

辻村は研究を論文にまとめ、1932年に東京大学から博士号を授与される。日本初の女性農学博士の誕生だ。戦後はお茶の水女子大学教授となって研究を続けた。

緑茶に心身の健康効果が期待できるのは世界中の多くの人が知るところ。それは女性ゆえの逆境でも努力を続け、緑茶の栄養価を科学的に証明した辻村のおかげだ。