両刀の剣…。
日本は、米国との貿易交渉の手段として、膨大な国債備蓄を挙げている
reuters.com 2025/05/03
Japan says massive Treasury stockpile among tools for US trade talks
日本の財務相は 5月2日、米国との貿易交渉で 1兆ドル (144兆円)超の米国債保有をカードとして利用できる可能性があると述べ、米国に対する巨額債権国としての日本の影響力を初めて明確に強調した。
加藤勝信財務大臣は保有株の売却を示唆しなかったものの、同大臣の発言は、米国債の二大保有国である日本と中国がトランプ政権に関税譲歩を求めてどのような行動を取るかという、世界の投資家が抱く重大な懸念にかかわるものだ。
ドナルド・トランプ米大統領が 4月2日に日本などの主要な戦略的同盟国を含む貿易相手国に広範囲な関税を課す決定を下したことを受けて、先月、米国債市場では世界的に大規模な売りが起きた。
加藤総裁はテレビのインタビューで、世界最大規模を誇る日本の米国債保有の主な目的は、必要に応じて円介入を行えるだけの十分な流動性を確保することだと述べた。
「しかし、交渉では当然、すべてのカードをテーブルに出す必要がある。それもそのカードの一つになるだろう」と、日本は米国との貿易交渉で米国債を市場で売却しないと米国に保証できるかとの質問に対し、同氏は答えた。
「そのカードを実際に使うかどうかは別の問題だ」と加藤氏は付け加えた。
加藤氏の発言は、貿易交渉において日本が保有する米国債を利用する可能性を排除した先月の発言とは対照的だ。
日本と中国は米国債市場に存在するため、米国の利回りが急上昇するたびに大きな注目を集めるが、両国の取引活動についてはほとんど知られていない。
日本は米国の緊密な同盟国として米国債保有を交渉材料として使う可能性は低いとみられているが、一部のアナリストは米国との貿易摩擦が激化する中で、中国が「核」オプションとして米国債保有を売却する可能性があると推測している。
しかし、今のところ、そのような売り圧力の兆候はほとんど見られない。米国財務省が先月発表したデータによると、 2月の外国による米国債保有高は 3.4%増加し、二大保有国である日本と中国が米国債のポジションを積み増している。
アナリストらは、日本が保有する膨大な米国債は、通貨をめぐるワシントンと東京の意見の相違を交渉する手段としても利用できると指摘する。
「これは交渉の切り札とまではいかないまでも、切り札の一つになるはずだ」と、野村証券(東京)のチーフ・マクロストラテジスト、松沢中氏は述べた。「両国の債券利回り曲線を平坦化するだけでなく、人為的な円高誘導といった、とんでもない要求を回避する効果もあるだろう」
しかし同時に、こうした脅威には時間的な限界がある。米国債の売却は市場を混乱させ、残りの保有額に巨額の損失をもたらし、日本と中国に損害を与えることになるからだ。
元米国務次官で現在はシティ・リサーチのグローバル・チーフエコノミストを務めるネイサン・シーツ氏は、日本と中国自身が米国債の売却で被るであろう打撃を考えると、この考えは「過去には全く問題にならなかった」と述べた。
「しかし、各国は持てるあらゆる手段を駆使しなければならない」と彼は述べた。「このようなことを考えなければならないという事実自体が、私たちが今生きている世界を示している」