中国が硫酸の輸出を5月から停止することは「中国が5月から硫酸の輸出を禁止へ」という事で書きました。
日本は、硫酸の生産量が必要量の100%を超えていて、一見すると問題がないように見えるのですが、こういう問題があるようです。もちろん、投稿者の私見ではありますが。硫酸は、農業(肥料の製造)、金属精錬、石油精製、電子部品の製造ラインなど、現代の社会に非常に重要なものです。
日本が直面するリスク
日本の硫酸自給率は、統計上の数値で見れば100%を超えており、世界有数の硫酸輸出立国でもある。
しかし、この数字には資源としての自律性という面で、現在の地政学リスクに直結する大きな罠が隠されている。
1. なぜ自給率が高いのか(非鉄金属精錬の副産物)
日本の硫酸生産の約 90% は、銅や亜鉛といった非鉄金属を精錬する際に出る「排ガス(二酸化硫黄)」を回収して作られている。
石油精製や硫黄そのものを輸入して作るのではなく、金属を作る過程でどうしても出てしまうものを製品化しているため、国内生産量は非常に安定している。
日本は年間約600万〜700万トンの硫酸を生産しているが、国内需要はそのうち約400万〜500万トン程度。余剰分(年間200万トン前後)は中国や東南アジア、南米へと輸出されている。
2. 自給100%の裏にある致命的なリスク
数値だけを見れば中国が輸出を止めても日本は大丈夫そうだが、実態はそう単純ではない。
1. 原料となる鉱石の海外依存
硫酸を作るための銅鉱石や亜鉛鉱石のほぼ 100%を海外(南米やオーストラリアなど)からの輸入に頼っている。
ホルムズ海峡の封鎖や海上輸送網の混乱で鉱石が日本に届かなくなれば、金属精錬が止まり、その副産物である硫酸の生産も同時に止まる。
2. 硫酸の貯蔵が困難
硫酸は強力な腐食性物質であり、専用の巨大な貯蔵タンクが必要。
在庫を持てないいことが前提の流動的な製品なので、生産が止まれば、数週間から1ヶ月程度で国内在庫は底をつく。
3. 中国の輸出停止による玉突き現象
中国(世界最大の輸出国)が供給を止めると、世界中の買い手が日本産の硫酸に殺到する。
日本国内の需要家(化学メーカーや肥料メーカー)が、海外の買い手との買い付け競争にさらされ、国内価格が暴騰するリスクがある。
結論:日本が直面するシナリオ
日本の硫酸供給は海洋輸送の安全と非鉄金属の輸入に完全に依存した自給だ。
日本は作っているから安心というのは平時の論理であり、有事においては鉱石が入らなければ、硫酸も、金属も、肥料も、すべてが同時に消えるという、極めて脆弱な一本の鎖でつながった構造になっている。
ナフサ不足に加えて硫酸の国際需給が崩壊すれば、日本の製造業は文字通り川上から干上がってしまうリスクがある。