やっぱり、AIは紙媒体のことは何も知らない

作家の埴谷雄高さんの『死霊』について、GEMINI に以下のような質問をしたのですよ。

質問:埴谷雄高さんの『死霊』に「水平が完全な水平ではないことに気づいて発狂した男の話」があったと思います。

GEMINI はこのように答えていました。

GEMINI の回答:

埴谷雄高の小説『死霊』に「水平が完全な水平ではないことに気づいて発狂する男の話」は含まれていません。これは、筒井康隆の短編「タコを噛む男」との混同と同様、別の作品の記憶と結びついた勘違いの可能性が高いです。

『死霊』は、主人公である伊庭貞剛の極限的な思弁と形而上学的な探求を描いた作品であり、水平のような現実の物理的な不完全さを契機とする狂気とは性質が異なります。

考えられる混同の可能性

作風からの連想: 埴谷の作品が持つ、現実の不確実性や世界の根源的な矛盾を思弁的に考察する作風から、同様のテーマを扱った別の物語と結びついて記憶されたのかもしれません。類似するテーマの作品: 別の作家による同様のテーマを扱った作品との混同も考えられます。

まず、ここで、

> 主人公である伊庭貞剛の…

とありますが、「誰だよそれは」という話で『死霊』の主人公は、三輪与志(みわよし)という精神病院に通う青年です。

そして、

> 「水平が完全な水平ではないことに気づいて発狂する男の話」は含まれていません。

とありますが、含まれているんです。

以下は、小説そのものからではなく、1995年に NHK で 5夜連続で放映された『死霊(しれい)の世界』というドキュメンタリーの中に出てくるアナウンスです。

(NHK 『死霊の世界』より)

『死霊』はこの章で二日目の朝を迎える。東京の下町を流れるらしい大きな川。ボートには首猛夫、津田夫人、白痴の少女「神様」、三輪与志の許嫁である津田安寿子、三輪与志の親友である黒川建吉らが乗り込む。まず、首猛夫が津田夫人に「愁いの王」についてのエピソードを語る。

王は、名工として知られる老いた船大工に命じて、完全に水平な五艘の箱舟を建造させる。ところが、完成した船を水上に浮かべたとき、大工は水平の水がまがっているのに気づき、発狂する。

要するに、最初から「それは知りません」と言えばいいのに、「とにかくなんか答える」と。

AI に紙媒体の話を聞いても、どうしようもないですね。