農業協同組合が肥料原料をモロッコから緊急調達し、春用の肥料については確保

 


肥料原料 例年並み確保モロッコからリン安緊急調達 JA全農

農業協同組合新聞o 2022/003/01

JA全農は肥料原料の確保に向けてモロッコからりん安を緊急調達するなどの取り組みを通じて、春肥は例年並みの製品供給数量を確保できる見通しになっていることを2月28日に明らかした。

肥料の国際市況は天然ガスやアンモニア価格が急騰していることや、穀物価格の値上がりで生産者の作付け意欲が強く、肥料需要が旺盛なことから大幅に上昇している。

こうした状況のなか、中国は肥料の輸出規制を実施している。昨年10月に肥料の輸出には検査を義務づけ、中国の肥料メーカーは税関に対して輸出製品の分析評価など書類の提出をしているが、許可がおりるまで時間がかかっており、船積みができないで輸出が停滞したままだという。

日本全体では中国は尿素で37%、リン安で90%を占める輸入先だ。

こうしたなかJA全農はモロッコ産のリン安を緊急調達した。3万tを積載した第1船目が昨年末にモロッコを出航し2月上旬に日本に到着した。引き続き、3月に第2船目、第3船目が日本に到着する予定となっている。

モロッコの調達先はOCP社(モロッコ王立リン鉱公社)。リン鉱石を世界全体の生産量の2割にあたる4100万t生産し、リン酸質肥料を1000万t生産する世界最大のリン酸メーカーで、全農とはリン鉱石の取引を中心に長年、協力関係にある。

JA全農では、一時的な在庫切れの懸念があったものの、この緊急調達によって春肥期間として総量は確保できる見通しとなったとしている。

また、尿素の輸入先はマレーシアが日本全体の輸入量の47%を占めており全農もマレーシアから調達しており影響は出ていない。ただ、中国以外からの調達が困難な粒状塩安は国産硫安など他原料への置き換えを進めているという。

塩化加里の輸入先は日本全体でカナダが60%ともっとも多いが、ロシア15%、ベラルーシ10%となっている。ウクライナに侵攻したロシアに対する国際社会の経済制裁で、輸入に影響が出ると見られているが、今後の国際情勢についてJA全農は「国の対応を含めて注視していく」としている。

JA全農は、春肥については原料確保ができ、例年並みの製品供給数量を確保できる見通しとなっているとする。

ただ、世界的に肥料需要は旺盛で需給の一層のひっ迫が想定され、「環境として価格上昇要因が多く、国際市況はさらに上昇が懸念される。厳しい局面になっている」とみる。

そのためJA全農では、肥料原料の安定確保と銘柄集約と農家積み上げに加えて、土壌診断に基づく適正施肥と海外の原料市況の動向に左右されにくい、国内資源であるたい肥などの利活用促進の取り組みを一層強化するとしている。