[最強台風通過 実りの季節、農業に打撃 裂けた特産サトウキビ、ポンカンやナシ落果…農家「危機的」 鹿児島県内]という報道

 


最強台風通過 実りの季節、農業に打撃 裂けた特産サトウキビ、ポンカンやナシ落果…農家「危機的」 鹿児島県内

南日本新聞 2022/09/20

過去最強クラスの勢力を維持した台風14号が鹿児島県を通過した19日、猛威を振るった跡が徐々に明らかになってきた。

離島特産のサトウキビはなぎ倒され、各地で収穫を控える果実が落ちるなどした。基幹産業である農業への打撃は大きく、農家から「危機的状況」との声も漏れた。

「やられたな」。中種子町野間の梶屋良幸さん(72)は横倒しになり、葉先が細かく裂けたサトウキビを見ながらつぶやいた。

県内のキビ生産量の2割を超える種子島でも、中種子はとりわけ栽培が盛ん。9月は糖度を蓄える時期を控えた最後の“成長期”だ。倒れたり葉が裂けたりすると回復にエネルギーを使うため、成長を阻んで糖度が上がらない可能性もある。

約17ヘクタールで栽培する梶尾さんは「ここ数年はいい出来だったのに」と悔しげだ。

特産の安納いもへの影響も懸念される。

地域の伝統的な農産物・食品を知的財産として守るため、3月に国が地理的表示(GI)保護制度に登録したばかり。2年前には台風襲来をきっかけにサツマイモ基腐(もとぐされ)病が広まった。西之表市安納の中園大輔さん(44)は「発症するかどうか、1週間ほどは気が抜けない」。

1924(大正13)年に台湾から苗木を導入し栽培が始まった屋久島町特産のポンカン。お歳暮用として人気が高く、12月に収穫期を迎える。

町によると、南部から西部にかけて落果や枝折れが目立った。南部の小島集落の岩川政廣さん(71)は「18日に風が一日中吹き、全滅に近い畑もある」と肩を落とす。

県本土の農産物も影響を受けた。霧島市国分重久の観光農園「岩元農園」では、栽培するナシの3~4割が落果した。7月には大雨でブドウにも被害が出た。岩元一郎さん(69)は「気候変動が進めば今後も泣かされることが増える。品種開発など、仲間と知恵を絞りたい」と前を向いた。

台風が東寄りに進み、北薩地方は大きな被害を逃れた農家も。阿久根市脇本で大将季(だいまさき)などを栽培する西田学さん(43)の畑では、実に急激に水分が入ることで皮が割れる「裂果」が生じるなどしたが、「思ったほど被害は受けなかった。収穫に向け1個も無駄にしたくない」。

薩摩川内市樋脇町塔之原のイチゴ農家山中裕幸さん(60)は「ほぼ被害がなかったのはラッキーとしか言いようがない」とほっとした様子。さつま町平川の和泉茂さん(73)のナシ農園では、最大2割ほど落果した木があったものの、「甚大にならず良かった。今期は台風がもう来ないことを願う」と話した。