米著名エコノミストが「厳しい景気後退により、株価は壊滅的な下落に達する」と語る

 


ルービニ氏、米国は「長く、厄介な」リセッションへ – 株は40%下落も

bloomberg.co.jp 2022/09/21

著名エコノミスト、ヌリエル・ルービニ氏は、2022年末から米国をはじめ世界的に「長く、厄介な」リセッション(景気後退)に突入し、23年いっぱい続く恐れがあると予想した。米S&P500種株価指数については、急激な調整局面を迎えるとの見通しを示した。

同氏は2008年の金融危機を正確に予想したことで知られる。

ルービニ・マクロ・アソシエーツの会長兼最高経営責任者(CEO)を務めるルービニ氏は、20日のインタビューで「ごく普通のリセッションでさえ、S&P500種は30%下げる可能性がある」とした上で、自身が予想する「真のハードランディング(硬着陸)」が実際に起きた場合は、同指数の下落率は40%に達し得ると述べた。

2007-08年の住宅バブル崩壊を予見し、「ドクター・ドゥーム(破滅論者)」の異名を取るルービニ氏は、米国の浅いリセッションを予想している人は企業と政府の高い債務比率に注目すべきだと指摘。金利上昇と債務返済コスト増加に伴い、「ゾンビ状態となった多くの機関や家庭、企業、銀行、シャドーバンク、さらには国が死を迎えることになる」と述べた。

ルービニ氏は、ハードランディングを起こさずに2%のインフレ率を達成するのは、米金融当局にとって「ミッション・インポッシブル」だと述べ、ほぼ実行不可能な任務との見解を示した。

同氏は年内の米利上げ幅について、今週の米連邦公開市場委員会(FOMC)会合で75ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)、11月と12月の会合で50bpずつと予想している。利上げがルービニ氏の予想通りとなった場合、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジは年末までに4ー4.25%となる。

ただ特に賃金とサービスセクターでの根強いインフレにより、FOMCは一段の利上げに「動かざるを得ないだろう」とし、FF金利は5%に向かうと予想。

さらに、新型コロナウイルス禍やロシアとウクライナの戦争、中国の「ゼロコロナ」政策に伴う負の供給ショックでコストは上昇し、経済成長は鈍化すると分析。そうした状況から、長期にわたる低成長と失業増加によるインフレ抑制という、米金融当局が現在目指している「グロース・リセッション」の達成は困難だとの見方を示した。

世界的にリセッションに陥った場合でも、財政面での刺激策は期待できないとルービニ氏は指摘。政府は過剰な債務を抱えており、「財政による景気刺激の手段が尽きつつある」と説明した。さらに高インフレの状況は、「財政面での刺激策を行った場合、総需要を過熱させる」ことも意味すると述べた。

その結果、ルービニ氏は1970年代のようなスタグフレーションと、金融危機時のような巨額の債務過剰に陥ると予想。「短く浅いリセッションにはならない。厳しく長く、そして厄介なものになるだろう」と述べた。