[「なんで否定してくるわけ?」 「いや」で話し始める人に衝撃の事実]という記事で知る衝撃の事実

 

(※) いや (← すでに使ってるし)、これ、私はもう全体的にこれなんですよ(北海道出身)。親しい人との会話で、「いや」と「いやいや」で始まるのがすごく多いんですが、これが方言的なもので、ダメな人にはダメだと初めて知りました。まあ、もはや訂正することは不可能なほど定着していますけれど。


「なんで否定してくるわけ?」 「いや」で話し始める人に衝撃の事実

withnews.jp 2022/09/12

「なんでいつも否定してくるわけ?」 突然、友人から指摘された〝口癖〟に、心から驚いたマンガが話題になっています。作者に制作の経緯を聞きました。さらに方言の専門家にインタビューすると、その口癖が発せられる「背景」も判明しました。

 

「あら」「えっと」ぐらいの音

話題になったのは、9月6日に漫画家さわぐちけいすけさん(@tricolorebicol1)がTwitterに投稿したマンガです。

「前々から気になってたんだけど…なんでいつも否定してくるわけ?」

友人からそう問われた主人公は驚きます。

「いやそうだっけ?」「それ!それのこと!なんで毎回否定すんの?」「否定してないよ!」

「いやぁいい天気ですね」「いや今日も頑張ったなぁ」

そんな風に「いや」を使う主人公。

「感嘆詞として使ってたの…?」と驚く友人に、主人公は「これ口癖みたいなものかも。プラスの意味もマイナスの意味もないもん」と受け止め方の違いにがくぜんとします。

東北出身の主人公は、友人から「方言みたいなものなのでは?」と問われて振り返ると、家族や友人たちが自然と「いや」と言っていたシーンが思い浮かびます。

「いや信じてくれ! 『あら』『えっと』的な音でしかないんだ!」

ツイートは瞬く間に拡散され、3.9万のいいねがついています(11日夜現在)。

「いやめっちゃ言うわこれ」「心当たりがありすぎて怖い」「否定ばっかりしやがってって言われた時、ほんとに違うのにって落ち込んでた」といった共感の声も寄せられています。

息継ぎと同じような感じで使う

作者のさわぐちさんは、友人たちとオンラインで会話していた時の体験をもとに創作したといいます。

会話があったのは投稿の2日前。「衝撃すぎたので、すぐマンガを描きました」と振り返ります。

岩手出身のさわぐちさん。「自分では『いや』と口にしていることを全く意識していなかったんです」と振り返ります。

山形に住む友人と違和感なくやりとしていたとき、それを聞いていた神奈川に住む友人のひとりから「なんで『いや』って言うの?」「文脈で否定していないことは分かるけど、『いや』を使っているということは、何か含みがあるの?」と尋ねられました。

「いや」に何らかの意味を持たせていなかったさわぐちさんと、山形在住の友人は、「否定の意味でとられてしまうことがあるのか!」と全力で驚いたといいます。

「方言かどうかも分からないんですが、たしかに振り返ると、東北でよく聞いていて、東京では聞いたことがなかったんですよね」と話します。

「『あのー』『えっと』と一緒で、息継ぎと同じような感じで使っているんです。ほかにも言ったことを強調したり、感情を込めたりするときに使っているかなと思います」

コミュニケーション考えるきっかけに

友人との会話をもとに、伝わりやすいように創作したマンガには「上司にこれですごく怒られたことがある」「『否定するな』が何のことか分からなくて口癖を直すようにした」といった反響も。

一方で、「話し相手と少しでも違う考えを持ちたいスタンスの人が、無意識につけてると思ってたけど、地域の話し言葉の慣習である可能性は考えてなかった」という受け止め側の反応もありました。

さわぐちさんは、仕事上の打ち合わせなどでは出づらく、気の抜けているタイミングで「いや」が出ることが多いそうです。

「気を許した関係だからこそ出てしまうのに、『この人、いっつも否定するよね』『機嫌が悪いのかな』って思われてたら悲しいですよね。これが方言かどうかは全く分からないのですが、『コミュニケーション』を考えるきっかけになればいいな、とマンガを投稿しました」

専門家に聞くと…大切な「一体感の維持」

「いや」は方言なのでしょうか? 東北大学方言研究センターの教授・小林隆さんに聞きました。

――東北で「いや」が使われることはあるのでしょうか。

感動詞のひとつですね。かつて感動詞(驚き方)の全国調査をしたことがあります。

そのデータで「イヤ」の出てきそうな調査項目をざっと見てみると、まず「イヤ」は全国で使用されますが、東日本、特に北関東から東北にかけてよく使われることが分かりました。

一方で、「イヤイヤ」のように「イヤ」を反復するのはほぼ東北に限られるようです。

特に東北地方は「感動詞」を使うことが多いんです。よく驚くんですよね。

――「よく驚く」とは、どういうことでしょうか。

農村型社会が基盤になっているところでは、お互いに驚き合う、感動し合うことで、コミュニケーションをとって一体感を維持することが大切なんです。

都会的になればなるほど、そういう現象が影を潜めていきます。

――「いや」が円滑なコミュニケーションになっているんですね。

たとえば、相手の言っていることに対して「いやーそうなんですか」と「いや」を使って感動してみるんですね。

「いや」だけではなくて、「いやいやいや」と重ねたり、「いやぁ」と伸ばしてみたり。

私自身は新潟出身なのですが、仙台の大学に来たら友人が「いやいやいや」とよく言うので、なんだか年寄りっぽいなぁと思っていたら、そういう理由でした(笑)

――なるほど(笑)。「いや」と話す側は、感動を伝えようとしているんですね。

それが、日常生活の具体例を調査すると、相手への受け答えとして出るだけではなく、語りかけるときに「いや」が出ることもあるんですよ。

荷物が重くて持ってもらいたいと頼むとき、「いやぁ重たくて重たくて。手伝ってもらえねぇべか」と自分の大変な状況をアピールするんです。

相手は「いや大変だべ」と答えたりします。「いやー重たくて、まいねじゃ(だめだ)」と会話が重なることもありますね。

――茨城生まれ・父が福島出身の筆者も、実は「いや」をけっこう使うんです。

先ほどの調査では、福島や北関東でも「いや」が多用されていたので、まさに当てはまりますね。

実は「いや」の背景には、感動を大切にする基盤があるんです。

東北は独特な感動詞が話されています。感情のひだを一音一音で表現していて、感情表現が豊かなんですよ。

朝ドラの「あまちゃん」で話題になった「じぇじぇじぇ」もそうですが、「ばばばばぁ」と驚く感動詞もあります。

しかも「ばぁ」と一音だけだったり「ばぁ~」と伸ばしたり、「ばばばばぁ」と重ねたり、変幻自在で、言葉本来のフレッシュな感覚をよく残しているんです。

これまで方言研究では「感動詞」はなかなかスポットライトが当たっていなかったのですが、ようやく研究されて分かってきたところでもあります。

コミュニケーションの違和感には、話し手の性格だけでなく、意外にも方言の地域差に由来するものがあることが分かって、すごく興味深いですね。

そういう視点を持っていただけると、不要なトラブルも減るのかなと思います。

何か反応が変だな、と思ったら

マンガを描いたさわぐちさんは「方言を変えてほしい、直した方がいいとは全く思ってないです。でも違う受け止め方をされてしまう可能性もあるんですよね」と苦笑します。

「あれ、最近仲良くなった友達の反応がなにか変だな……と思ったら、自分のマンガを見せて『こういうことです』とお知らせする粗品のように使ってもらえればうれしいです」と話しています。