[「猛暑のマスク」をナメてはいけない医学的理由」]というダイアモンドの記事

 

(※) ここにある「動静脈吻合(AVA)」というのを初めて知りました。調べています。


「猛暑のマスク」をナメてはいけない医学的理由、意外な熱中症予防テクとは

DIAMOND ONLINE 2022/07/25

平年に比べて3週間前後も早く梅雨が明けた。早すぎる真夏の到来で、熱中症になる人が少なくない。一方で、新型コロナウイルス感染拡大の「第7波」も深刻で、今年もマスクが手放せない夏になりそうだ。そうした中、どのように熱中症対策を講じるべきなのか。危険な「かくれ脱水」にならないために気を付けておくべきポイントとは。(ナビタスクリニック理事長、医師 久住英二)

早すぎる真夏の到来… 「夏マスク」に要注意な医学的理由

最短の梅雨に加え、今年は嫌な記録更新がもう一つある。熱中症搬送数だ。総務省消防庁の発表によると、6月に熱中症で救急搬送された人は1万5657人に上り、6月としては過去最多となった。

早すぎる真夏の到来に、私たちの体が追い付いていない。一番の気がかりは、「外出増」×「夏マスク」という組み合わせだ。

厚生労働省は、熱中症予防のため「他者と2メートル以上の距離が確保できない中で会話を行う場合以外、屋外でマスクを着用する必要はありません」「特に夏場は、マスクを外すことを推奨します」としているが、呼び掛けの効果は上がっていないようだ。

人目が気になって外せないのも、よく分かる。だが、「夏マスク」の体への負担を甘く見てはいけない。

なぜなら、顔の中でも特に鼻から頬、唇にかけては、「動静脈吻合(AVA)」と呼ばれる、体温調節を専門とする血管が走っているからだ。

AVAは、動脈と静脈が切り替わる手足の末端や頭部にあって、閉じたり開いたりして血流を調節し、体温調整を担っている。拡張すると毛細血管の10倍の太さになって血流量は1万倍にもなる一方、完全に閉じることもある。

例えば、暑い場所では血液が皮膚表面に近い静脈を流れて外に熱を逃がせるよう、交通整理をする。暑いと頬が赤くなるのはそのためだ。皮膚表面から浅いところに毛細血管が張り巡らされているので、血液の色が透けて見える。

ところがマスクは、頬から鼻、唇を全部覆ってしまう。AVAは役割を果たせず、体温が上がっていく

さらに、吐き出す息(呼気)からも水蒸気とともに熱が放出されるはずが、それも妨げられて熱がこもる。湿気が閉じ込められるので、喉の渇きを感じにくくなり、意識的に水分を摂取しないと自覚症状のない「かくれ脱水」に陥りやすくなる。

この脱水こそが、熱中症の分かれ目ともいえる。そのまま進めば発汗が減って体温が上昇し、体内の調節機能が狂い始めて、熱中症まっしぐらだ。

要注意!「かくれ脱水」のサインとは? 飲み物を間違うと脱水悪化や命の危険も

熱中症を回避するには、「脱水」の予防が必須だ。

人は体の5%の水分を失うと脱水や熱中症になるとされるが、なってしまったら水を飲むだけで体調を回復させることは難しい。意識障害など、水を飲めない状態になることも多い。

本格的な脱水の手前で、体内の水分状態を正常化しなければならない。

そのためには、以下のような「かくれ脱水」のサインを見逃さないことだ。

● 唾液がねばつく
● おしっこの色が濃い、回数が少ない
● 便秘がち
● 舌が乾く、ザラザラ、赤黒い
● 脇の下がカサカサに乾いている
● 足がむくむ(靴下の痕がなかなか消えない)
● 皮膚をつまむと、3秒以上形が戻らない
● 爪を押した後、赤みが戻るのが遅い

上記の点に気付いたらすぐ、経口補水液やスポーツドリンクなど、電解質入りで吸収の早い飲料を取ることだ。

緑茶やコーヒーなどカフェインの入った飲み物、アルコール類は適さない。脱水・利尿作用があり、やはりおしっこが増えて、取った以上の水分が体から排出されてしまうからだ。

ビールのおいしい季節だが、飲みたいならビールにもチェイサー(一緒に飲む水など)を用意しよう。お茶やコーヒーは、ノンカフェインのものを選ぶといい。

また、汗をたくさんかいたときも、ただの水やお茶でなく、必ず電解質入りの経口補水液やスポーツドリンクを選ぶようにする。汗と一緒に塩分(ナトリウム)やカリウムなどの電解質が失われているので、水分だけを大量投入すると、血液が薄まってしまう。

血液中のナトリウム濃度が低下すると、「低ナトリウム血症」になる。軽ければ疲労感を感じる程度だが、もっと薄まってしまうと頭痛や嘔吐、食欲不振のほか、反応の低下や錯乱などの精神症状も出てくる。重症ではけいれんや意識障害が起こり、昏睡から死に至ることもある。

どれだけ水分を取ればいいのか? 効率的な摂取に意外なアレがおすすめ

脱水や熱中症を回避するため、厚労省は、1日に1.2リットルの水分摂取を推奨している。ただ、汗をかくような行動をとるなら、もうちょっと多めに1.5~2リットルか、それ以上は必要だ。

家にいると水分を取るのを忘れるという人もいるが、意識的に取るようにしたい。

ポイントは、「喉が渇く前に、ちょっとずつ、こまめに」とること。喉が渇いていない状況で一気にコップ何杯も飲んでも、おしっこが増えるだけだ。

特に高齢者は、脱水を起こしやすい。筋肉が落ちて体脂肪率が増え、体内の水分量も減っている上に、喉が渇く感覚も衰えている。お手洗いが近くなるからと、水分を控えるのは絶対NGだ。

それでも「水ばかり飲みづらい」という人もいるだろう。そんな人こそ、汁気の多い献立を意識していただきたい。

実は、意外と認識されていないのが、「食事からの水分摂取」の重要性だ。

人は、1日に1リットルもの水分を食事から取り入れている。食べ物に含まれる水分はゆっくり吸収され、血中にちょっとずつゆっくり入っていくので、結局は効率的な水分補給となる。

オススメは、ご飯の朝食をしっかり取ることだ。普通に炊いた米飯は、実は水分量が6割超に上る。味噌汁とセットだと、塩分と水分が適度に取れる。野菜やタンパク質のおかずをとることで、さまざまなミネラル(電解質)も補給できてしまう。

食欲があまりなければ、水分を多く含んでいるそうめんなどの麺類を。パン類のときは、必ず同時にノンカフェインのお茶などを飲みながら食べるようにしよう。果物やヨーグルトも適度に取り入れたい。