[100年に1回の「太陽フレア」に警戒を]という総務省報告についての報道

 


携帯電話が不通・広域停電・GPS精度低下…100年に1回の「太陽フレア」に警戒を

読売新聞 2022/04/27

通信障害などをもたらす恐れのある太陽表面の爆発現象「太陽フレア」について、総務省の有識者会議は26日、被害想定や対策を盛り込んだ報告書案をまとめた。最悪のケースでは、一時的に携帯電話が使えなくなるほか、広域停電が発生する可能性もあると指摘し、企業や行政に注意を促す警報制度の強化が必要だと指摘した。

最悪シナリオ

「宇宙天気予報の高度化の在り方に関する検討会」が公表した報告書案では、100年に1回の頻度で起きるとされる大規模なフレアが2週間連続で発生する「最悪シナリオ」を想定。携帯電話が不通になるほか、110番や119番通報がつながりにくい事態が各地で発生するとした。

人工衛星に不具合が生じ、天気予報の精度の低下や全地球測位システム(GPS)の精度も低下する。位置情報には最大数十メートルのずれが生じ、カーナビゲーションにも大きな影響が出る可能性があるという。

航空機は衛星測位を頼れなくなるため、世界的に運航の見合わせや減便が多発することも想定されるとした。未対策の電力設備では誤作動が起きるため、広域停電が発生する恐れがあることも指摘した。

近年も被害

フレアなどの被害はこれまでにも確認されている。1989年にはカナダで約600万人が影響を受ける大規模な停電が発生。今年2月には米宇宙関連企業「スペースX」が打ち上げた人工衛星49基のうち40基が大気圏に突入する被害が起きている。

総務省などによると、太陽の活動は約11年周期で活発化を繰り返している。次回の活動のピークは2025年頃に到来すると予測されている。ただ、フレアの影響は産業界でもリスクとして十分に意識されておらず、一般向けの周知も進んでいないのが実情だ。

宇宙天気予報士

報告書案では、太陽の活動状況に関する予報や情報発信の強化を盛り込んだ。総務省が所管する「情報通信研究機構(NICT)」が現在も警報を出しているが、ウェブサイトやメール配信以外にも手段の多様化を進めるべきだと指摘した。

NICTに「宇宙天気予報オペレーションセンター(仮称)」を設置し、太陽の活動で起きる「宇宙天気現象」を予測する力を強化するよう求めた。専門知識を持つ人材の育成や、「宇宙天気予報士」制度の創設も掲げた。