(コメント)最近、昔の知り合いなどと会うと、「初めて会ってから40年 (@_@)」ということに気づくこともありまして、自分も長いことないなあ、とか思う部分もあり、寝る前に思い出投稿をしようと思います。
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Art Bears – Rats and Monkeys (1979)
舞台公演をおこなうときには「客入れ」という状態のときがありまして、つまり、お客さんが劇場に入ってきて、席に座っていくだけの時間なんですけれど、私はいつも、「その時にかける音楽」を真剣に考えました。
お客さんたちは日常からやって来るわけですが、「劇場に入ったときから、それは日常ではない」という感覚を、少なくとも self23 のお客さんたちには経験してほしかったんです。
舞台も日常と似たようなものなら、わざわざ刺激的な公演に足を運ぶ必要なんてないわけですし。
「もう逃げられない空間に入ってきたんですよ」
という意思表示を、客入れのときから行いたかったのですね。
お客さんたちが劇場に入ったときに目にするのは、薄暗い空間に、廃墟でありそうな空間が広がっているという曖昧なもので、そして、self23 の客入れでは、「お客さんを案内する人は誰もいない」のです。
まして、たまに見かけるような「公演中は携帯電話をお切り下さい」とか、そんなアナウンスも一切かかりません。
何が起こるかわからない薄暗い観客席(場合によっては、スモークでほとんど視界がないようなときもありました)に座っていただく。
ですので、このお客さんがたの期待を裏切ることは、客入れの段階からあってはいけないと思っていました。
「得体の知れない何だかリスキーな場所にいる」
と感じてもらう。
ですので、客入れの音楽は緻密に計算していました。
二十代中盤過ぎの頃のある公演で、全体の客入れの音楽の枠組みはできたのですが、「公演そのものに入る直前の曲」がどうしても決まらなかった。
わりと、暴力的な公演で、
「日常から非日常に一発で入ることのできるような曲ってないかなあ」
と思っていましたら、公演を手伝ってくれていた女の子が、
「こういうのどうです?」
と持ってきてくれたのが、英国のアート・ベアーズという前衛バンドの「ウィンターソングス」というアルバムでした(アマゾン見ると、在庫切れか異常な高値のものしかありませんでした)。
それを聴いていた中で、「あ、これ」と思った曲が以下の「ラッツ&スター」(それ別のだから)…ああ違う、ラッツ&モンキーズという曲でした。
ギタリストのフレッド・フリスという人などがやっていたもので、フレッド・フリスさんは、今年、日本にも来たことをこちらの記事でふれたことがあります。
「前衛だねえ」とか言いながらも、日常と非日常の間にラインを引くことのできそうな音楽だなあと、この曲を使った次第です。
少し間違うと「悪夢のような曲」にも聞こえますけれど、満ちあふれる非日常感というのが、前衛ロックの良さでもあるのかもしれません。
ちょっと運命的だったのは、この曲を YouTube で探していましたら、上の動画は 3日前にアップされたもので、まだ 1回しか視聴されていないものでした。
その後、アート・ベアーズの曲はずいぶんと聴きましたけれど、この曲が一番好きですかね。