[S&P500は今年、世界金融危機以降で最大の下落となる情勢]というロイターの報道

 


著名投資家ウッド氏の「グロース株」ファンド、金利上昇で惨敗

ロイター 2022/12/30

米著名投資家のキャシー・ウッド氏が率いる「アーク・イノベーション・ファンド」は新型コロナウイルスのパンデミック中に急上昇して注目を集めた。だが、今年は米ミューチュアルファンドの中で最下位に近い成績で年を終えようとしている。

インフレの高進と金利上昇により、グロース(成長)株の人気が衰えたことが原因だ。

同ファンドは年初から約67%下落し、下落率はS&P500種総合指数の3倍を超えている。

米国の「ミッドキャップ・グロース・ファンド」537本中で最悪の下落率であり、アクティブ運用されている全ての米株式ミューチュアルファンド3552本の中でも3544位となっている。

モーニングスターによる16日までの集計で明らかになった。

S&P500は今年、世界金融危機以降で最大の下落となる情勢であり、今年を無傷で切り抜けられるファンドはほとんど無さそうだ。

株式ファンドは年初からの運用成績が主要指数を0.6%下回っている。大半のファンドはS&P500の下落率約19%、ラッセル2000指数の下落率約22%よりも大幅に下げている。

オールスプリング・グローバル・インベストメンツのシニア投資ストラテジスト、ブライアン・ジェイコブセン氏は「ポートフォリオマネジャーは今年、インフレを見誤った。米連邦準備理事会(FRB)がインフレを見誤ったとも言えるかもしれない」と語った。

ウッズ氏が好んで投資しているグロース株は、FRBの積極的な利上げによってとりわけ大きな打撃を被った。FRBは当初、インフレは一過性のものだと考えていた。

ウッズ氏のファンドで保有額上位を占めるビデオ会議サービスのズーム・ビデオ・コミュニケーションズ、電気自動車(EV)のテスラ、フィンテックのブロック(旧社名スクエア)の株価はいずれも今年60%余り下げ、仮想医療サービスのテラドック・ヘルスと動画配信機器のロクに至っては下落率が70%を超えた。保有額上位10銘柄全ての下落率が30%以上となっている。

ウッズ氏は、インフレがこれほど持続することも予想していなかったようだ。1年前には、今後1年間は市場にとってデフレが真のリスクになると発言している。9月にはFRBの利上げが「間違い」だったと述べ、12月には米経済が「今年ずっと」リセッション(景気後退)に陥っていたとの見方を示した。

一方、アクティブ運用の株式ミューチュアルファンドの中で今年、運用成績トップ15位以内に入ったファンドは、主にエネルギーかコモディティに集中投資しており、石油その他の資源価格高騰の恩恵を受けた。「ザ・インベスコ・エネルギー・ファンド」の場合、年初来の上昇率は49%近くに達している。

モーニングスターのランキングでトップに付けたのは「ザ・マイクロセクターズ・US・ビッグオイル・3xレバレッジドETN」で、年初来172%も上昇した。このファンドは石油大手・シェブロンやエクソンモービルなどにレバレッジをかけて投資している。

ハイテク株投資は暗転

近年ハイテク株に積極投資して急上昇していた他のファンドも、今年は地に落ちた。

モーニングスターの大型株ファンドのランキングで最も低い部類には「モルガン・スタンレー・インサイトI」が含まれ、年初来の下落率が61.3%に達した。このファンドが最も多く保有しているのは、クラウドデータウェアハウスのスノーフレーク株。

ウッド氏は2020年、ズームやテラドックなど「ステイホーム銘柄」に投資して好成績を収め、一躍著名人になった。運用資産は一時、276億ドルに達したが、現在は65億ドル弱になっている。

栄光の日々の記憶からか、多くの投資家はウッド氏の「未来予想」に賭け続けている。リッパーのデータによると、アーク・イノベーション・ファンドの運用資産は今年、保有銘柄の下落により半分にしぼんだが、投資家からは差し引き16億ドルの資金が流入した。

分析会社ベッタファイの調査責任者、トッド・ローゼンブルース氏は「このファンドに対する投資家の忠誠心は異常なほどだ。今もなお、最大級のアクティブ運用ETF(上場投資信託)であり、2023年に成績が好転すれば、このファンドは持続力を得るだろう」と述べた。