[価値半分になったトルコリラ インフレ率は20%超、市民生活を直撃]という報道

 


価値半分になったトルコリラ インフレ率は20%超、市民生活を直撃

朝日新聞 2021/12/24

トルコで通貨リラの急落に端を発した、経済の混乱が広がっている。対ドルで最安値を更新し、一時は1年前に比べて価値が半分に。大統領は預金保護という異例の政策を持ち出したが、政府発表のインフレ率は20%を超え、市民生活は圧迫されるばかりだ。一方、リラ安を受け、国境の街には変化が起きている。

■「家賃と光熱費を払ったら残らない」

「簡潔に話をしてあげる。何でもかんでも高くなって苦しいのよ!」

最大都市イスタンブールの青果市場。高齢の女性が私に向かって声を張り上げた。以前は200リラ(約1950円)も使えば満杯になった買い物用の手押し車だが、最近は同じ金額だと半分ほどしか埋まらないという。

野菜や果物を買いに来た主婦ディレキ・シェンさん(42)は外食をやめ、楽しみだった週3回ほどの友人とのカフェ通いも1回に我慢している。最近は家計の支出が翻訳業の夫の収入を上回ることもあり、「パートの仕事を探しています」。

月額2700リラ(約2万6千円)の年金で妻と暮らすミタット・カラオールさん(74)は、「外国には旅行を楽しむ年金生活者もいるのに、トルコでは家賃と光熱費を払ったら残らない」とあきらめ顔だ。

この市場の店主らによると、今のところはスーパーなどに比べて値上げはできるだけ抑えている。だが、輸送費や買い物袋のコストがかさむうえ、客の財布のひもが固くなって利益が出なくなっている。年明けからは大きく値上げする見込みだという。

リラは9月からじりじりと下がりはじめ、11月に入って急落。12月20日には1ドルが18リラを超え、年初と比べて5割以上も下がった。

リラ安は輸入コストの上昇、そして物価高を招いた。公式統計では11月の消費者物価の上昇率は半年前から5ポイント近く上がり21%を超えたが、民間機関の調べではそれをはるかに上回る。

また、トルコは元々エネルギーのほとんどを輸入に頼っているため、原油高も重なってガソリンやガスの価格に跳ね返っている。

市民生活が苦しくなる中、主食のパンを市場より安く売る公営の販売所にも人が集まる。250グラムのパンは、民間より2リラ以上安い1・25リラ。3日分のパンを買った自営業セラハッティン・デデオールさん(62)は、最近は客が多くて20分ほど並ぶこともあると話す。家業のプラスチック製品の製造は、輸入する原材料費が高騰。「困り果てている。政府に真っ当な経済政策がないのが問題だ」と憤った。

中央銀行は今月、5度にわたって為替介入を実施した。政府は16日、来年の最低賃金を50%引き上げると発表。

エルドアン大統領は、「我々は賃金引き上げにより、物価高騰で労働者の生活が立ちゆかなくなるのを許さないという決意を見せた」と発言。「我々はできるだけ早くこれらの問題に打ち勝つ」と述べた。