味の素が、アメリカ遺伝子治療薬製造会社を買収

 

味の素、何になろうとしている?


味の素、米遺伝子治療薬製造会社を約840億円で買収-自己株買いも

bloomberg.co.jp 2023/11/13

味の素は13日、同社の米子会社を通じて遺伝子治療薬の製造受託などを手掛ける米フォージ・バイオティックス・ホールディングスの全株式を約5億5400万ドル(約840億円)で買収すると発表した。同領域への本格参入により、ヘルスケア領域での飛躍的成長を図るという。

発表資料によると、フォージは遺伝子治療薬製造の過程で重要とされるアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターとプラスミドDNAの生産技術を保有する

バイオテック企業の初期臨床向けに製造実績を積み上げ、ここ数年で急成長。希少疾患の中でも患者数の多い疾患に対応して商業生産が可能な世界最大規模の製造技術・設備を持っており、今後も継続的に成長できる見込みとしている。

買収は米国の規制法令上の許可を経て、12月に実施を予定している。味の素の広報担当者によると、買収資金は銀行借り入れとコマーシャルペーパー(CP)の発行により調達する予定だ。連結業績への影響は軽微という。

調味料などを手掛ける味の素は、遺伝子治療薬の製造受託を次世代の戦略事業として位置付けている。自社が保有する遺伝子改変やアミノサイエンス関連の技術を生かし、今回の買収を通じて再生医療の領域への本格進出の足がかりとしたい考えだ。

同社の発表資料によると、米国を中心にAAVを用いた治療方法は7つの新規医療品が承認されているほか、100以上の臨床試験が行われており、今後製造市場の拡大が見込まれる。

味の素の藤江太郎社長は、約2年前から買収を検討していたことを明らかにした上で、遺伝子治療薬の受託製造で「圧倒的な地位を築くことに自信を持っている」と買収発表後のオンライン会見で述べた。

また、同社は三菱UFJ銀行などが政策株として保有していた同社株を1244万1000株売り出すことも発表。詳細は以下の通り。

・三菱UFJ銀が425万6400株、三菱UFJ信託銀行が339万6700株、みずほ銀行が255万600株など

・オーバーアロットメントとして186万5900株

・一部株主から株式を売却したいとの意向を確認したため実施

・13日の終値を基にしたブルームバーグの試算によると、売り出しは約714億円規模(オーバーアロットメント分は含まず)

・また市場への需給影響を勘案し、上限400億円、発行済み株式の1.92%相当の自己株式を取得し、一部を除いて全て消却することも明らかにした