ヒトへのブタ心臓移植では「人間からの臓器提供では通常みられない現象」が起きた

 

(前報道) アメリカのブタ心臓移植患者が術後2か月で死亡 (2022/03/10)

(※) 上の記事にも書きましたけれど、ウイルス学者の山内一也さんの『ウイルスの意味論』という著作の書評からです。

> かつてはブタ臓器を用いた異種間移植が有望視されていた。ところが、ブタのDNA内に多数のレトロウイルス遺伝子が存在することが分かった。これらはブタがある種のウイルスに感染することを防いでいると考えられている。

> しかし、ブタにとって有用なこれら内在性レトロウイルス群は、人間にとって完全な異物となる。もしブタの臓器をそのままヒトに移植してしまうと、臓器が生着した後、臓器受取人(レシピエント)がブタのウイルス感染症に悩まされる危険性が生じるのである。


異種移植、人からは見られぬ異常 ブタの心臓、米メリーランド大

共同 2022/06/23

米メリーランド大のチームは22日、重い心臓病の患者に対するブタの心臓移植の結果を論文報告した。

1月の手術から7週間にわたり心臓は血液を送り続けたが、その後に急変。心臓の壁が厚くなり心筋が壊死するなど、人間からの臓器提供では通常みられない現象が起きた。

心臓の機能が失われ、2カ月で生命維持を断念した。

ブタ由来の「サイトメガロウイルス」も検出、感染症が体調悪化のきっかけになったとの見方もある。

移植を希望する人に比べて提供者は少なく、動物の臓器を使う「異種移植」への期待は根強い。チームは実用化に向け検証を続ける。