統合失調症の一因に胎児期の免疫障害の影響があることを島根大医学部が突きとめる

 

(※) ここにあります「胎児期の免疫障害」というのは、他の報道の表現では、

> 胎内にいる時に母親が強い感染症にかかるなどして免疫が活性化することで起きる場合がある、胎児期の免疫障害

となっていまして、今のコロナとワクチン時代にはなかなか難しい響きでもあります。

論文は以下となります。

母体免疫活性化ラットモデルにおける線条体外ドーパミンD2受容体の画像化
Imaging extra-striatal dopamine D2 receptors in a maternal immune activation rat model


【ニュースリリース】胎児期の免疫障害によって統合失調症に類似した脳機能障害が起こることをモデル動物で確認

島根大学医学部 2022/05/27

統合失調症は幻覚や妄想などにより、言動や行動が上手くまとまらなくなる精神疾患で、人種や地域を問わず人口の約1%が罹患すると言われています。

統合失調症の病態メカニズムは明らかになっていませんが、その症状を緩和できる薬剤の多くはドーパミン伝達の遮断作用を有しています。

このことから統合失調症患者の脳内ではドーパミン受容体になんらかの障害があるのではないかと考えられており、世界中研究者によって研究が行われています。

近年、非侵襲的にドーパミン受容体を可視化する技術の一つである陽電子放出断層撮影法(Positron Emission Tomography; PET)の発展により、統合失調患者の脳内においてドーパミンD2受容体に機能異常があることが報告されています。しかし、このドーパミンD2受容体の機能異常が起こる原因は未だ明らかになっていません。

統合失調症の発症要因は様々あると言われていますが、胎児期の異常免疫活性(Maternal immune activation; MIA)もまたその要因になるのではないかと考えられています。

そこで我々は国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構(量研)と共同でMIAがドーパミンD2受容体機能障害を引き起こすかMIAモデル動物(MIAラット)の脳を、PETを用いて解析を行いました。

その結果、モデル動物において「前部帯状回のドーパミンD2受容体密度が低下」を発見しました。

今回の研究で発見された「前部帯状回のドーパミンD2受容体密度が低下」は実際の統合失調症患者におけるPET研究によっても類似の報告があることから(Suhara 2002など)、今後、MIAによって引き起こされるドーパミン受容体機能異常の分子メカニズムを明らかにすることで、統合失調症の発症メカニズムの一端を解明できるのではないかと予想されます。