「頭の中で突然の爆発音、入眠を妨げる謎の現象とは」という記事…というか、これはオレの経験じゃん

 

今はわりとなくなりましたけれど、この記事にある「頭の中で突然の爆発音」は、以前は日常的にずいぶんとありました。結構そういう人っているんですね。

私の場合は、ベンゾジアゼピンの断薬の期間が数年あったんですけれど、その頃よくありました。眠りにつく瞬間くらいのときに「爆発の音で起こされちゃう」のです。


頭の中で突然の爆発音、入眠を妨げる謎の現象とは。原因は不明

ナショナルジオグラフィック 2024/03/15

ミュージシャンでギター職人のデイブ・ロボス氏は、大きな音には慣れっこだったが、ある夜、頭の中で突然大きな爆発音がした時には少し不安を覚えたという。まさに眠りに落ちようとした瞬間のことだった。あまりに激しい音に、目が覚めてしまった。

「頭の中の頭頂部あたりで、非常に鋭い音がしました」。それと一緒に、車が衝突する映像が一瞬目の前をよぎった。「2つが同時に起こった感じでした」

ロボス氏が体験したのは、「頭内爆発音症候群(EHS)」と呼ばれる謎の多い現象で、「睡眠時随伴症」の一つだ。睡眠時随伴症には、睡眠時遊行症(夢遊病)、寝言、睡眠麻痺(金縛り)、そしてミオクローヌスと呼ばれる筋肉の瞬間的な痙攣などがあるが、身体への危険や痛みが伴わない限り、ほとんどの場合、害はない。

EHSを研究している数少ない睡眠の専門家の一人で、認定臨床心理学者のブライアン・シャープレス氏も、気にならなければEHSは無害だと話す。「痛みが伴わない限り、心配する必要はありません」

 

打ち明けられない人が多い

EHSを経験しても、医師や家族にさえ相談する人はごくわずかだと、シャープレス氏は言う。

2017年4月6日付で医学誌「Cephalalgia」に発表された論文によると、研究の対象となったEHSの経験がある人のうち、専門家に相談したことがある人はわずか11%で、繰り返し経験した人でも8%しか対策を取ろうとしなかったという。

「頭の中で音がする」ことを恥ずかしいと思う人もいて、継続した害や痛みがないとわかるとそのままにする人が多い。

米メリーランド州フレデリックにあるフレデリック・ヘルス・メディカル・グループの睡眠医学専門医で、メリーランド州睡眠学会の理事を務めるジェニファー・マクドナルド・スロウィク氏も、治療を求めようとする人は少ないと話す。

 

なぜ、どんなときに起こる?

EHSの経験は、睡眠クリニックを受診した患者に詳しい睡眠検査を行う中で明らかになることが多い。「ナルコレプシーに関する質問をしていてわかることがあります」。ナルコレプシーは日中急な眠気に襲われる病気で、幻聴を伴うことがある。

「少しでも深刻な疾患が疑われれば、睡眠検査の一環として追加の検査を行い、何でもないことを確認します」

スロウィク氏と同じくシャープレス氏も、頭に関しては慎重になるに越したことはないと警告する。最悪の場合、痛みを伴うEHSは、危険度が高く死に至ることもあるくも膜下出血の兆候かもしれないのだ。

わずか一瞬の出来事であるEHSに関してまず誤解されやすいのは、そのタイミングだ。眠っているときに音で目覚めるわけではなく、睡眠に入る直前のわずかな時間に起こる。

シャープレス氏によると、今のところ脳波検査を含めて、睡眠中のEHS活動を特定した研究はない。むしろEHSは、覚醒時の聴覚、視覚、運動に関連する領域を脳がシャットダウンしようとするときに起こる神経細胞の誤作動の一種であると考えられている。

「ひどくリラックスした状態、と言うことができます。EHSは、そのようなときに起こるようです」

また、これもよくある誤解だが、EHSは耳鳴りではない。

 

衝突、銃声、ドアを閉める音……

ロボス氏は自動車が衝突したような音だったというが、EHS研究に参加した経験者は、それを様々な音に例えている。

弾の炸裂音、ドアがバタンと閉まる音、何かが壁に当たった音、銃声、花火、金属製の鍋を叩いた音、叫び声、波がはじける音、稲妻、巨大なうなり声、自動車が通り過ぎる音など、例えの幅は広いが、一つだけ共通しているのは、誰もがそれを騒音と感じていることだ。

「交響曲やはっきりした話し声ではありません。とてつもなく大きなうるさい音だと言います」と、シャープレス氏は言う。

この現象を初めて報告し、名前を付けたのは、サイラス・ウィアー・ミッチェルという米フィラデルフィアの神経学者で、1876年のことだ。「銃声」や「ピストル」のような音が聞こえると訴える患者の例を報告し、「感覚ショック」と呼んだ。1980年代に、神経学者のJ・M・S・ピアース氏が「頭内爆発音症候群(EHS)」と改名した。

ピアース氏は、1989年7月に医学誌「Neurology, Neurosurgery & Psychiatry」に発表した論文で、「関連する過去の疾患の痕跡はほとんどなく、その他の中枢神経系疾患の兆候も見られない」「完全に良性で、ごく当たり前にあるが、あまり報告されていないものと思われる」と書いている。

また、「何が爆弾のような音を引き起こしているのは謎である」とピアース氏は書いているが、30年以上たった今もシャープレス氏ら研究者の見解は同じだ。

2005年に、EHSは米睡眠医学会によって睡眠障害と分類された。以前は、50歳以上の女性に起こりやすいとされていたが、これまでに行われたいくつかの研究により否定されている。

最新のデータは、男性も女性も同等にEHSを経験していることを示している。シャープレス氏が執筆し2015年3月に「Journal of Sleep Research」に発表した研究では、質問に答えた学生のうち18%が少なくとも1回はEHSの経験があると答えた。

EHSは、この現象に名前が付けられた1800年代半ばよりも古い記録がないが、2018年4月15日付で医学誌「Journal of Clinical Sleep Medicine」に発表された論文は、17世紀の哲学者ルネ・デカルトがこれを経験していた可能性があると指摘している。デカルトは、夢と夢の間に頭の中で爆発音がして、「人生のどの道を追求するか」という疑問に答えが与えられたと語っている。

論文の著者である英サウサンプトン大学のアビデミ・イドウ・オタイク氏は、EHSに悩む人について、「無害ではあるものの、本人にしてみれば何か深刻な脳の病気があるのではないかと心配になるのも理解できます。しかも多くの場合、決めつけられたり信じてもらえなかったりするかもしれないと思って自分の経験を話したがりません」と、同大学サイトの記事で語っている。