[飲食店に近づく悪夢の大倒産時代]という報道

 


竹取御殿、海峡…居酒屋「協力金終了→倒産」が連鎖。飲食店に近づく悪夢の大倒産時代

bizspa.jp 2022/04/18

居酒屋「竹取御殿」「柚柚~yuyu~」を運営していたアンドモワ株式会社が、2022年4月6日に東京地裁より破産手続き開始決定を受けました。負債総額は80億円。

さらにアンドモワの保証債務を含めて55億円の負債を抱えていた株式会社ApeXも連鎖して倒産しました。ApeXはレストラン「GLEAM」「ぷらっと」などの運営をしていました。

アンドモワは、コロナ禍の2020年6月に全店舗を休業して従業員のリストラを行っていましたが、オミクロン株の出現で事業環境は改善しませんでした。時短協力金が切れたタイミングでの倒産となったのです。

居酒屋を中心に飲食店の需要は回復しておらず、今回の大型倒産は序章に過ぎない可能性があります。中小企業コンサルタントの筆者が今後を分析します。

明暗がくっきり分かれた居酒屋の売上高

飲食店の売上高は明暗がくっきり分かれています。日本フードサービス協会が公開している外食産業の業態別売上高のグラフ(前年との比較を%で表示)を見ると、緊急事態宣言が発令された2020年4月に居酒屋(パブレストラン)を中心に売上高は激しく落ち込んだものの、2022年1月には150%超えて回復しているように見えます。

しかし、これは前年比です。2021年1月から2022年2月までの数字を2019年1月から2022年2月と比較すると見え方は違ってきます。居酒屋はGoToEatがあった2020年10月でさえ60%の水準に留まっています。

2022年もコロナ前比で売上高40%以下

このグラフをもとに計算すると、居酒屋の2021年1月から12月までの売上高はコロナ前比で29.3%です。月商400万円、年商5000万円の居酒屋があったとします。売上高は1465万円まで落ち込む計算です。

飲食店の家賃比率は売上高10%程度と言われており、家賃だけで500万円。人件費は30%が目安なので1500万円。家賃と人件費だけで大赤字になります。

当然、従業員やアルバイトの雇用は維持できません。そこで政府は事業の継続や雇用を維持するための助成金や協力金を用意しました。

回復薬か毒薬か? 助成金の効果

助成金・協力金の効果は絶大でした。居酒屋最大手のワタミは2021年4月から12月までで28億5200万円の営業損失を計上しましたが、33億8100万円の助成金を得て経常黒字となりました。「塚田農場」のエー・ピーホールディングも同期間で23億8600万円の営業損失となったものの、43億300万円の助成金を得ています。

政府はコロナで満身創痍となった居酒屋を救済したのです。居酒屋を中心とした飲食店が苦境下にあることは誰の目にも明らかでした。コロナ禍で凄まじい数の倒産が出るとの噂もありましたが、事実はその逆です。

東京商工リサーチによると、2021年の倒産件数は6030件。1990年以来の6000件台で歴史的な低水準となりました。

倒産の内訳を業種別に見ると、サービス業が2007年で前年比22.6%の減少。飲食業は842件から648件、宿泊業は118件から86件にそれぞれ減少しています。

協力金を失うと堰を切ったように倒産

しかしながら、まん延防止等重点措置が解除され、協力金が当てにできない状況になると、突如として飲食店の倒産が相次ぎます。2022年3月15日に「珈琲&無国籍ダイニング 海峡」などを運営していた株式会社海峡が倒産。負債総額は14億2000万円とみられています。

3月16日にはラーメン店「中華そば勝本」の株式会社勝本が破産手続きの開始決定を受けました。勝本はホテルのフレンチの総料理長が作るラーメンが評判となり、行列のできる店として知られていました。負債総額は14億円です。

3月29日には人形町のから揚げ弁当「からっ鳥」の株式会社いなきんが破産。負債総額は3000万円の見通しです。

大型倒産となったアンドモワ。中規模の海峡と勝本、小規模のいなきん。飲食店を経営するさまざまなタイプの企業が倒産へと至っています。

宴会需要の消失が痛かった

ワタミの代表取締役会長兼社長である渡邉美樹氏は、コロナ禍のいくつかのインタビューで「居酒屋を中心とした外食の需要は完全回復しないだろう」といった旨の発言をし、店舗の退店を進める意向を示しました。当初、需要はいずれ回復すると予想しており、退店よりも店舗を別業態に転換する戦略をとっていました。撤退へと舵を切ったのです。

特に宴会需要の回復は鈍く、協力金なしに店舗を継続するのは困難です。アンドモワが得意としていたのは、繁華街立地の雑居ビルなどの空中階(2階以上、または地下)に店舗を構えるタイプです。

この業態の特徴は、通りすがりの顧客を捕まえるのが難しいため、「ぐるなび」などのグルメメディアに大量の広告費を投じ、宴会需要を獲得するというもの。宴会需要が消失するとビジネスモデルが成り立ちません。

しかも、空中階の店舗は焼肉店などの別業態に転換しても集客しづらいというデメリットがあります。宴会を収益のメインとしていた居酒屋企業は多く、長期的な苦戦が予想されます。こうした企業から広告費を得ていたぐるなびの売上高は、コロナ禍で半分ほどの水準まで落ち込みました。

飲食店の大倒産時代がひっそりと近づいているのかもしれません。