記事「アミロイド線維の形成機構の理解と制御」より

最近の以下の記事で投稿者が懸念していることが、神戸大学院の茶谷研究室のページで、ほんの少しですが、わかった気がします。

(記事)ちょっと気になる「スパイクタンパク質は自己複製アミロイドなのか?」という投稿
BDW 2023年12月28日

以下が、茶谷研究室のページです。

太字はこちらでしています。


アミロイド線維の形成機構の理解と制御

神戸大学院 理学研究科 化学専攻 生命分子化学茶谷研究室 2014年

タンパク質は、ネイティブ構造という、それぞれに固有の立体構造を形成します。ところが状況によっては折りたたみを誤り、「アミロイド線維」という凝集体を形成してしまいます。

正しいネイティブ構造への構造形成を「フォールディング」と呼ぶのに対し、誤った折りたたみを「ミスフォールディング」と呼びますが、ミスフォールディングは、本来生命活動の基盤を担うタンパク質から機能を奪うばかりか、毒性や感染性を示す危険な存在に変えてしまう深刻な現象です

実際にアミロイド線維は、アルツハイマー病、クロイツフェルトヤコブ病・狂牛病といったプリオン病、ハンチントン病、透析アミロイドーシスなど、アミロイドーシスと総称される疾患、さらに最近では神経変性疾患にも関与することがわかっています。

驚くことに、病気に関わるタンパク質だけでなく、その他の多くのタンパク質もアミロイド線維を形成する性質を持ち合わせていることが確認されています。

おそらく多くのタンパク質は、アミロイド線維構造になるポテンシャルをできる限り抑えながらネイティブ構造を形成しており、何らかの要因で抑えきれなくなったときにアミロイド線維が形成され、生体内に沈着してしまうのでしょう。

当研究室では、アミロイド病の仕組みをタンパク質レベルで解明・制御することを目標とし、アミロイド線維形成を中心に、タンパク質のフォールディング、ミスフォールディング、集合化、凝集の分子機構に関する研究に取り組んでいます。

アミロイド線維はタンパク質分子が幾重にも重なっているために分子量が大変大きく、ネイティブ構造の場合と同じようには解析が進みません。扱いは困難ですが、従来の解析技術に加えて新たな解析方法を工夫し、また他の研究分野で使用されている解析技術も積極的に組み合わせながらアミロイド線維形成機構の解明に挑戦したいと考えています。

主な研究テーマ

(1)アミロイド線維の構造複製機構の解明

アミロイド線維は、自らを鋳型としてアミロイド線維構造を複製し、自己増殖する性質を持ちます。私たちは、アミロイド線維の構造複製過程で鋳型構造をどのように認識し再現しているのかの詳細な仕組みを明らかにしたいと考えています。

(2)形成初期イベントであるアミロイド核生成機構の解明

上述の「構造複製能」により、ひとたび最小構造単位であるアミロイド核が生成してしまうと、アミロイド線維はその後速やかに自己増殖し発病に至ります。このように発症時期を左右するアミロイド核がどのようなタンパク質集合を経て生成するのかについても興味を持っています。

(3)アミロイド線維の構造制御方法の開拓

アミロイド線維の中には、生理機能を果たすものも見つかっており、ナノ材料としての利用価値に期待が高まっています。私たちは、線維の形成や溶解、構造特性を自由自在にコントロールすることで、新たな材料として応用利用することも目指しています。