[“居酒屋“が大苦戦、市場規模はコロナ前の4割に 売上が2年連続で大幅減少、43.6%が赤字経営]という東京商工リサーチの報道

 


“居酒屋“が大苦戦、市場規模はコロナ前の4割に 売上が2年連続で大幅減少、43.6%が赤字経営 ~ 2021年度決算 主要「居酒屋業績動向」調査 ~

東京商工リサーチ 2022/10/13

2021年度決算 主要「居酒屋業績動向」調査

2021年度の「酒場,ビヤホール(居酒屋)」を運営する主要337社の売上高合計は3,454億2,900万円(前期比19.5%減)で、最終利益は101億6,300万円の赤字(前期は1,334億2,500万円の赤字)だった。

2021年度は緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が繰り返され、居酒屋の営業は大幅に制限された。休業や時短営業で客足が遠のき、居酒屋の売上はコロナ前から4,556億8,600万円が蒸発した。

利益は、持続化給付金や休業協力金などが行き渡り、赤字幅は縮小したが、2020年度に引き続いて赤字だった。コロナ前からの人手不足や人件費の高騰に加え、戻らない宴会需要や若者のアルコール離れなど、居酒屋が抱える課題は多い。

コロナ第7波が収束に向かい、経済活動も再開に動いている。だが、長引くコロナ禍で生活様式が変わり、さらに様々な資材高騰を価格転嫁すると、値上げが客足をさらに遠のかせる悪循環に陥りかねない。

コロナ禍に続いて物価高に見舞われ、収益悪化の構造から抜け出せない居酒屋は、抜本的なビジネスモデルの見直しも求められている。

居酒屋売上、コロナ前の4割に縮小

主な居酒屋337社の最新期決算(2021年4月-2022年3月期)の売上高合計は、3,454億2,900万円(前期比19.5%減)、最終利益の合計は101億6,300万円の赤字(前期は1,334億2,500万円の赤字)だった。

売上高は前期比46.4%減と半減した2020年度の4,293億1,900万円からさらに19.5%減少し、コロナ前の2019年度と比べると43.1%に縮小した。2021年度は緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の発令で、居酒屋の多くは休業や時短営業を余儀なくされ、2期連続で大幅な減収となった。

一方、利益合計は2期ぶりに改善した。2020年度はコロナ禍での急激な売上減少に経費の削減が間に合わず、大幅な赤字を計上する居酒屋が多かった。しかし、2021年度は給付金や協力金の入金が進んだことなどで、コロナ前の2019年度(163億9,200万円の赤字)よりも赤字幅が縮小した。

減収企業は71.5%

最新期の減収は241社(前期305社)で、減収企業率は71.5%だった。前期の減収企業率90.5%から19.0ポイント改善したが、それでも7割の居酒屋が2020年度より減収となった。

赤字企業が4割、前期の7割から大幅改善

最新期で最終利益が赤字の居酒屋は43.6%(147社)を占めた。前期の70.3%(237社)から、26.7ポイント改善した。

6割以上が前期比10%以上の大幅減収

売上高の伸長率は、最多レンジが「減収率10%以上」の208社で、全体の61.7%を占めた。

以下、「増収率0~5%未満」が52社(構成比15.4%)、「同10%以上~100%未満」が35社(同10.3%)の順。

売上が前期比50%以下は41社(同12.1%)で、減収幅の最大は82.5%減だった。

前期から10%以上の増収だった企業の割合は11.5%(前期1.7%)まで上昇した。一方、依然として前期比10%以上の大幅減収が全体の6割を占め、居酒屋業界の業績回復への道のりは険しい。

「減収増益」45.6%、前期の約8倍に増加

最新期では、「減収増益」が最も多く、154社で構成比は45.6%と半数近くを占めた。前期に最多の275社(構成比81.6%)だった「減収減益」は、3分の1以下の75社まで減少した。

コロナ禍で売上が減少したが、持続化給付金や休業協力金、雇用調整助成金などの支援策が奏功したことがわかる。「増収増益」は54社と前期の5社から大幅に増え、「増収減益」は6社(前期13社)だった。

2021年度の居酒屋倒産は150件で前年度から14.2%減少した。過去30年間では、最多を記録した2020年度(175件)から減少したが、コロナ関連倒産が85件発生するなど業況悪化に歯止めがかからず、過去2番目の高水準となった。

2021年度は緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の発令が続き、居酒屋業態は長期間の休業や時短営業を余儀なくされた。その結果、主要居酒屋の売上高合計はコロナ前の2019年度(売上高合計8,011億1,500万円)から56.8%減の3,454億2,900万円まで縮小した。

利益は101億6,300万円の赤字だったが、前年度(1,334億2,500万円の赤字)から赤字幅は1,200億円以上縮小した。ただ、本業で稼いだ利益でなく、持続化給付金や休業協力金などのコロナ関連支援の寄与が大きかった。支援が一巡した現在、売上回復で採算を維持できるかが問われている。

10月11日から始まった入国制限の緩和や全国旅行支援など、経済活動はアフターコロナに向け動き出している。だが、2年半のコロナ禍で変化した生活様式の下、居酒屋に客足が戻るかは不透明だ。書き入れ時の年末年始の状況によっては、支援効果が薄れるなか、居酒屋の倒産、休廃業が増加しかねない。