精子細胞は自発的に「外来 DNA の断片を取り込む」ということを示した論文

 

もともと、ブログ記事「脂質ナノ粒子 / RNAバイオテクノロジーの元設計者の方の「有害事象の根本」に関する投稿全文」に、バイオテクノロジーデザイナーの方の投稿を載せたのですが、そこに以下のような記述がありました。

> 精子細胞は自発的に DNA の断片を「取り込む」ことができます。

> LNP (脂質ナノ粒子)内にはプラスミド DNA が汚染物として存在します。これが精巣に入り精子に到達すると、精子は DNA プラスミドを吸収して DNA プラスミドを変化させることができます。

記事では、その根拠となる提示していませんでしたので、その論文です。2001年1月の論文ですので、23年くらい前の研究です。


マウス精子による外来DNA取り込みの制御

ncbi.nlm.nih.gov 2001/01/15

Regulation of foreign DNA uptake by mouse spermatozoa

概要

我々は、成熟および未熟な哺乳動物の精子の両方における DNA 取り込みのいくつかの特徴を研究した。

精巣上体尾部から採取された成熟精子は、塩とカルシウムのみを含む緩衝液中に外来 DNA を組み込むことができる。

しかし、未熟な精子は DNA に結合することができない。これは、精子膜に機能的な受容体がないことが原因であると考えられる。なぜなら、この膜が超音波処理によって破壊されると、成熟精子の分布と一致する、精子核の後染色体後領域で DNA が検出されるからだ。

成熟精子と未熟精子の DNA 結合タンパク質を比較することで、DNA の推定上の膜受容体の一部である可能性のある 2つのバンドを特定することができた。

一方、成熟精子への DNA の取り込みは精漿 (※ 精液の精子以外の液体部分)によって妨げられる。

我々は、精漿の 2つの成分、精嚢液中に存在するカルシウム依存性 DNase (※ DNA 分解酵素)、および腹側前立腺によって分泌されるいくつかの DNA 結合タンパク質が、阻害活性の原因となる可能性があることを同定した。

全体として、結果は、哺乳動物の精子による DNA の取り込みが非常に特異的で高度に制御された現象であることを示している。