スパイクタンパク質のACE2への結合は腸内細菌叢を変化(悪化)させるという中国の論文

 

論文は以下にあります。

・SARS-CoV-2 と胃腸疾患
SARS-CoV-2 and gastrointestinal diseases

内容は、スパイクタンパク質が ACE2 に結合することで、重症の胃腸疾患を引き起こす可能性があるというものですが、その中の「 3.3 腸内フローラの安定性に影響を与える」を抜粋します。


SARS-CoV-2 と胃腸疾患

frontiersin.org 2023/05/30

3.3. 腸内フローラの安定性に影響を与える

ACE2 は腸の恒常性の維持と腸内細菌叢の安定性にとって必須の調節因子でもあり、そのノックアウトは腸内細菌叢を変化させ、それによって大腸炎を誘発する可能性がある。

同時に、腸内細菌叢の異常が潰瘍性病変の発症に主要な寄与因子であることも示唆されている。

感染中に SARS-CoV-2 患者の腸内細菌叢に重大な変化が見出されており、これが重要な生理学的機能を持つ共生細菌の減少につながり、腸内細菌叢の障害を引き起こす可能性がある。

ACE2 は、腸内の中性アミノ酸トランスポーターの発現を調節することにより、腸内細菌叢の組成に影響を与える。

トリプトファン生合成経路を含むいくつかの生合成経路は、おそらく腸内微生物および糞便中のいくつかの微生物由来の代謝産物の枯渇によって、新型コロナウイルス感染症患者において大幅に変化することが判明している。それは、宿主の炎症反応を調節し、ウイルス病原体に対する耐性を促進することに密接に関連している。

SARS-CoV-2 は腸内微生物叢の安定性に影響を与えることで胃腸症状を引き起こす可能性があると推測される。

さらに、SARS-CoV-2 スパイクタンパク質の S1サブユニットが ACE2 に結合すると、B(0)AT1 (※ アミノ酸輸送体)/ACE2複合体が腸内に取り込まれ、これが腸内プロインスリンの放出にも影響し、さらに腸内細菌叢の安定性に影響を与えることが研究で判明した。