[日本はすでに「飢餓国」だった]というダイアモンド誌の記事からの抜粋

 

記事の後半部分の抜粋です。記事前半には日本の食糧事情に関する細かい数値なども記載されています。記事はこちらにあります。


日本はすでに「飢餓国」だった!食料自給率の試算でわかった“驚きの数値”とは?

diamond.jp 2024/05/08

高橋五郎:愛知大学名誉教授

…コメの政府備蓄量は100万トン程度と決められ、民間在庫(販売待ちの在庫)を合わせた月別の保管量(政府備蓄+民間在庫)は月によって変動し、農水省によると、最多は全国の新米が出そろう11月で450万トン程度、最少は収穫期が始まる前の8月で200万トン程度と、250万トンもの差がある。

政府はこれで十分だと太鼓判を押しているようだが、この量では有事や大災害を想定したものからほど遠い「10年に一度の不作(作況指数92)や、通常程度の不作(作況指数94)が2年連続した事態」が前提でしかない

世の中が平和である時はこれでもいいのだろうが、冒頭で述べたような有事の際にはまったく意味を持たないのではないか?

日本に直接関係する有事にでもなると、海外にほぼ100%依存する農業機械向けの石油燃料と化学肥料や化学農薬の原料は大きな制約を受けずにはいられない。平均年齢68歳の稲作「高齢者農業」を支えてきたのは、農業機械化と化学肥料・農薬である。

そのほか、ほぼすべてを海外に依存する超低自給率の小麦・大豆・トウモロコシ、肉類に食用油原料、野菜類や加工食品、魚介類の輸入も、平和のときとまったく同じようなわけにはいかないだろう。

四方を海で囲まれた日本列島自体が海上封鎖される可能性もなくはないが、最も懸念される事態は、マラッカ海峡や台湾海峡、インドネシアからグアムまで膨らんで日本列島に至る第二列島線(中国が想定する海上軍事線)を通過する船舶のリスクである。アメリカがついているさ、という声は海のかなたに消えてしまう恐れがある。

本書の想定では、もし日本に関係する有事が半年でも続いた場合、このわずかな食料の保管量では、国内では食料不足から餓死者が続出する悪夢が現実になる恐れがある

特に人口が集中する東京や大阪には食料の備蓄も在庫もほとんどなく、交通事情から地方の余剰食料を運ぶにも苦労するおそれが十分にある。なんといっても、東京や大阪の食料自給率はゼロに等しいことをこの2つの大都市住民は知っておくべきであろう

日本に関係すると想定される有事とは何かというと、朝鮮半島・台湾海峡・尖閣諸島での紛争や突発的な超大国間軍事行動などである。いつ起きてもおかしくないと言われている南海トラフ地震や首都直下型地震も、広い意味では有事に属するのではなかろうか。

これらの有事を想定した国内食料システムの構築が急務だと思われるが、政府にはその気も問題意識もなさそうである。

本来は、国民に対しては少なくとも半年分以上の食料を家庭で備蓄することを勧め、生産現場に対しては普段から生産・流通体制のあり方の構築を実践的・自主的に促すべきではなかろうか? 

もちろんそれには、農政のあり方を基本に立ち返って再考することが不可欠であろう。