[中東の食卓から消えたパン]という報道

 

(※) この報道はまるで他人事ですが、自給率と人口の問題からだと、日本のほうがはるかに厳しいです。そして、中東のこれらの国はロシアの敵対国ではないですが、日本は今はロシアの敵対国です。


中東の食卓から消えたパン…露・ウクライナに小麦依存で「国内備蓄は残り1か月」

読売新聞 2022/03/22

ロシアのウクライナ侵攻が中東・北アフリカの「台所」を揺さぶっている。地域の主食である小麦などの穀物自給率は4割程度で、ロシアやウクライナからの輸入に大きく依存するためだ。紛争地では人道危機の深刻化が懸念され、政情悪化を危惧するエジプトなどは国民の不安 払拭に躍起となっている。

パレスチナ自治区ガザ地区のスーパーでは侵攻後、50キロ・グラムの小麦粉が3割値上がりし、100シェケル(約3600円)となった。供給元のエジプトがガザへの輸出制限を始め、砂糖や肉などの価格も4割上昇。人口の6割が貧困層のガザ市民に打撃を与え、購買力低下でスーパーでは棚の売れ残りが多くなった。

タクシー運転手のマハムード・アブデルハデルさん(55)宅の小麦は尽き、食卓からパンは消えた。週に5回の楽しみだったレンズ豆のスープも週2回に減った。「一番安い豆すら買えない。今後生きていけるのか」と不安を吐露した。

貧困家庭に食糧支援を行う国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の小麦も、ほとんどがウクライナ産だ。供給元のトルコの業者が輸出制限する動きもある。内戦下のイエメンも3割をウクライナに依存しており、国連の3機関は14日、「年末までに最も深刻な飢餓状態に陥る」と共同声明を出した。

自給率低く

日本の農林水産省の統計などによると、中東・北アフリカ各国の穀物自給率は平均4~5割程度で、半数以上の国は3割以下だ。米マサチューセッツ工科大系のサイト「経済複雑性観測所(OEC)」によると、ウクライナの小麦輸出(2019年)の53%がこの地域向けとなっている。

小麦自給率が4割で、輸入分の8割を露・ウクライナ産に依存するエジプトでは侵攻後、制裁や供給減の不安が高まり、パンの価格は50%上昇した。輸入代替国の確保は難航し、政府は15日、販売店に価格上限を指定する方針を表明した。

レバノンは国内に出回る小麦の9割以上が露・ウクライナ産で、「国内備蓄は残り4~6週間」(経済省幹部)の危機的状況だ。政府は外貨不足で穀物を代替輸入する余裕はなく、スーパーでは連日、パンや小麦を求める列ができている。

動乱の火種

中東では、パンの値上がりが動乱の契機となった歴史がある。エジプトでは2011年の「アラブの春」で市民の蜂起拡大の要因となった。今月、小麦価格が2~4倍に跳ね上がったイラクでは市民デモが各地で散発。政府は便乗値上げに走る業者を摘発し、不安の沈静化を図っている。

穀物自給率が5%未満のサウジアラビアなど湾岸産油国は、原油高で得た利潤を輸入穀物の高騰への対応にあてる方針だ。だが、他の国では政府補助金の引き上げが、財政悪化に拍車をかける危険が高い。カイロ大学経済学部のワリド・ガバラ教授は「世界各国が輸入代替国を探す中、中東の非産油国が競争に勝てる見込みは少ない」と指摘する。