「オミクロン感染後のコロナウイルスの免疫刷り込みは、RBDでは持続するが、NTDでは持続しない」という論文

免疫刷り込みというのは、平たくいえば「先に獲得した免疫によって、その後の感染に対する免疫反応が弱くなること」で、厳密には違うのでしょうけれど、意味としては、抗原原罪という概念と似ています。

RBDというのと、NTDというのは、スパイクタンパク質の部位のことです。こちらの記事などで説明しています。

なお、この論文には「不活化ワクチンや組み換えタンパク質ワクチンによって…」とありますが、mRNA ワクチンを用いなかった中国の科学者たちの研究です。





歴代のSARS-CoV-2免疫刷り込みはRBDでは持続するが、オミクロン感染後のNTDでは持続しない

biorxiv.org 2024/05/30

Ancestral SARS-CoV-2 immune imprinting persists on RBD but not NTD after sequential Omicron infections

概要

オミクロンへの曝露が代々の SARS-CoV-2 の免疫刷り込みを克服できるかどうかは依然として議論の余地がある。ここでは、ワクチン接種を受けた人と接種を受けていない人における連続的なオミクロン感染によって引き起こされる B細胞応答を分析した。

歴代の SARS-CoV-2 とその変異体に対する血漿中和抗体価は、不活化ワクチンや組み換えタンパク質ワクチンによって免疫刷り込みが一貫して誘導されるわけではないことを示している。

しかし、いったん誘導されると、免疫刷り込みは連続的なオミクロンの曝露によって打ち消されることはない。

免疫刷り込みのある人とない人のモノクローナル抗体の結合特異性、中和能力、発生起源、標的エピトープを比較した。

受容体結合ドメイン(RBD)とスパイクの N末端ドメイン(NTD)はどちらも中和抗体の主な標的であるが、免疫刷り込みはオミクロン特異的中和抗体の産生を阻害し、広域中和抗体の発生を促進することによってのみ、RBD に対する抗体応答を形作る。

私たちは、NTD ベースのワクチンによって免疫刷り込みを無視して変異体特異的抗体を誘導するか、RBD を含むワクチンによって免疫刷り込みを活用して広範囲に中和する抗体を誘導できると提案する。

(コメント / この「免疫刷り込みを活用して広範囲に中和する抗体を誘導できる」というのは、よくわからないですが、中国で広く用いられたコロナワクチンは、RBD ベースでした)