人生のすべてをあきらめたまま生きる韓国の若者たちについての記事

> 「恋愛にはお金もかかるが、何より時間がもったいないです」

とかいう若者の発言は寂しいかぎりですが、しかし、ほぼ、よその国の話とはいえない気がします。


このままでは韓国は「ヤバい」ワケ…人生のすべてをあきらめたまま生きる「N放世代」

週刊現代 / 金 敬哲 2023/08/18

N放(ポ)世代と人口の崖

韓国の青年世代を指す流行語に、「N放世代」という自嘲的な言葉がある。「すべて」を表す不定数の「N」に、「あきらめる」という韓国語の頭文字である「放」を合成した「N放世代」は、厳しい経済状況のため、すべてをあきらめて生きる世代という意味だ。

恋愛、結婚、出産をあきらめる「三放世代」という造語が誕生したのが2011年で、その後、青年失業率の増加と非正規労働者の増加がマスコミで大々的に報じられるようになった2015年頃から流行語として盛んに使われるようになった。

以降、三放に加えて就職やマイホームもあきらめる「五放世代」、さらに人間関係や夢までもあきらめざるを得ない「七放世代」を経て、今や人生のすべてをあきらめたまま生きる「N放世代」へと進化したのだ。

鷺梁津の考試テルで公務員試験の勉強を続けているパク・ジュンスさんは、早くから恋愛と人間関係をあきらめて勉強にしがみついている。

恋愛にはお金もかかるが、何より時間がもったいないです。睡眠時間は5時間未満、食事時間を削るためにあえて一人飯を選んでいる私に、恋愛に使う時間なんてありません。1年以上、友達と会ったり、酒を飲んだりしていませんし、故郷にいる両親にも3年以上会っていません。受験勉強を始めてからは、秋夕(日本のお盆のような祝日)やクリスマス、正月など、世の中が休む日は私にとって働く日になりました。バイト代が2倍になるからです。もう30歳だし、いつまでも両親から生活費をもらって勉強するわけにもいきませんが、それでも頑張るしかないです」

教師を夢見て教師任用試験の勉強をしているハ・ヨンウさんは2年前から恋愛中だ。しかし、ハさんが彼女と会える時間はひと月にわずか1時間余りだ

「月に一度だけ、日曜日のお昼に塾周辺の食堂で、彼女とデートします。日曜日にも(塾の)授業があるので、彼女と昼ごはんを食べたら、すぐに塾へ戻って勉強しなければなりません。わずか1時間のデートのために遠くから来てくれる彼女にはいつも悪いと思っていますが、むしろ彼女のほうから1ヵ月に一度だけデートすることを提案してくれました。彼女は私が試験に合格したらすぐにでも結婚したいと思っているようですが、正直試験に合格したとしても、結婚資金を作るまでにはさらに数年かかりそうです

中小企業を退職して再び就活戦線に復帰したチョ・ユナさんは、韓国に住むことをあきらめようかと考えているという。

「再び就職準備生に戻って、以前より途方に暮れています。今は大学に行ったことを後悔しています。むしろ専門学校や高卒のほうが就職できたような気がするんです。どうしても就職が難しいようだったら、様子を見てワーキングホリデーに挑戦しようと考えています。ひとまず1年間海外に出て、そこに定住できるようであれば定住したいです」

こうしたN放世代の絶望感は、韓国の存亡にも直結している。

韓国統計庁の「2015年人口住宅総調査」(5年ごとに発表)によると、若年層の未婚率が急激に増加している。20代が2010年の86.8%から91.3%に増え、30代は29.2%から36.5%に増加した。特に兵役と就職問題などで結婚が遅れる男性の場合、30代の未婚率は44.3%にもなる。2025年には、30代の男女未婚率が50%を超えるという予想も発表されている。

若年層の未婚率の増加は、出生率にも大きな影響を及ぼす。韓国統計庁の「2018年出生統計」によると、2018年の韓国の合計特殊出生率(一人の女性が生涯に産む子供の数の平均)は0.98人と、統計を作成して以来最低を記録、1年間の出生児数もわずか32万人台に止まった。

最悪といわれた2017年の出生率1.05人よりもさらに落ち、世界初の「0人台」へ突入したのだ。国の存続を脅かす未曾有の事態といえる。

若年層が子供を産まない理由としては、経済的な問題が圧倒的に多い。女性家族部の「2015年度家族の実態調査」によると、20代の52.1%と30代の37.3%が経済的なことを考えて子供の出産計画をもっていないと明らかにした

韓国統計庁は2016年の人口推計で「2028年頃から総人口が減少する」という見通しを発表したが、出生率は予想を超える水準で減少しており、2019年3月に発表した「将来人口特別推計」では、韓国の総人口が自然減少を開始する予想時期を2019年下半期に修正した。

2006年、著名な人口専門家であるオックスフォード大学のデイビット・コールマン氏は、少子・高齢化によって地球上から消える危険国家の第1号として韓国を指名した。また韓国国会立法調査処は2014年、韓国の人口は2100年には2000万人に減少し、2750年には地球上から消滅すると予測した。

韓国の歴代政府は、少子化が本格的な問題として台頭してきた2006年から2016年までの間に、対策費として約100兆ウォン(約10兆円)の予算を投じており、2017年にできた文在寅政権も2年間で50兆ウォンをつぎ込んでいる。しかし、2006年に1.12人だった出生率は2018年には0.98人になり、世界で最も出生率が低い国となった。このままなら、韓国消滅の日はもっと早まるかもしれない。

さらに【つづき】〈韓国の若者たちが祖国を「地獄のように生き辛い国」という「納得の理由」…韓国を襲う「多重格差社会」〉では、生まれた環境によって階級が決まる韓国社会について、くわしくみていく。