欧州最大のイタリアのコメ産地が干ばつで壊滅的な被害。非常事態宣言が発出される

 


猛暑と干ばつでイタリアのコメに壊滅的被害、4000億円超の損失

ナショナルジオグラフィック NEWS 2022/07/28

欧州最大のコメ産地、非常事態宣言を発出、農家は悲鳴

イタリア北部が過去70年で最悪の高温と干ばつに見舞われている。イタリア北部を横断する国内最長のポー川は、川底が露出し、まるで砂浜のようだ。北イタリアの湖水地方として有名なマッジョーレ湖やコモ湖でも、水位が下がり続けている。そして、農業用水を供給する水路もよどみ、干上がりつつある。

この地域では2021年11月からまとまった雨や雪がほとんど降らず、川に流れ込む雪解け水の量が少なかったところに、初夏の猛暑が襲った。いつもであれば27℃を超えることはない気温が、しばしば38℃近くまで上昇した。

「こうした異常気象が、頻発するようになりました」と、イタリアの農業従事者連盟で土壌と水資源に関する上級政策アドバイザーを務める、バルバラ・ディ・ロロ氏は言う。「予想はしていましたが、残念なことに予想どおりになってしまいました」

すでに4000億円超の損失

イタリア北東部の都市ノバーラで、マッシモ・サローニ氏はガサガサと大きな乾いた音を立てながら稲田の中を歩いていた。本来ならば水をたたえた田んぼ一面に、1メートルほどに育ったエメラルドグリーンの稲が、黄金色の穂をつけているはずだ。しかし今、稲は黄褐色に変色し、雨不足から田んぼの土は固くなっている。枯れずに残った稲が点々とあるものの、サローニ氏のくるぶしほどの高さしかない。

「水不足で稲は大きなダメージを受けました。今年の収穫は難しいでしょう」と、サローニ氏は言う。

水田に水を張るのは、雑草を抑え、昼と夜で上下する温度を一定に保つためだ。30年以上、コメ作りに携わってきたサローニ氏が栽培する、さまざまな種類のコメの中には、イタリア料理で珍重されるカルナローリ米もある。でんぷん質を多く含み、煮崩れしにくい品種で、リゾットに使うと非常にクリーミーなものができる。

悪天候はコメ産業に大打撃を与えた。すでにおよそ30億ドル(約4100億円)の損失が出ている他、今年の収穫量は例年の7割前後になると予想されている。特に大きな被害を受けたのは、イタリア北部のロンバルディア州やピエモンテ州で、イタリアのコメのほぼ9割はここで生産されている。

またイタリアは欧州連合(EU)最大のコメ生産国で、その生産量はEU全体の半分以上にもなる。イタリアからコメを輸入する国々は、間違いなく大きな影響を受けるだろう。

とはいえ、干ばつと高温で影響を受けるのはコメだけではない。トウモロコシでは5割近く、夏野菜や果物、乳製品でも大幅な生産量の減少が予想され、イタリアの農家の半数近くが打撃を受けると予想されている。

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