インターフェロン刺激因子の「エリス」を発見。そして、それは STING でもあったという

 

最近、以下のエリスの記事を書いたのですが、「インターフェロン」という免役応答に重要な働きをするものの強力な刺激因子のひとつに ERIS というものがあることを偶然見つけました。

(参考記事)殺戮の中で地球に笑顔と自由が定着する日までの道程を、秩序と無秩序の同居を主張する「不和と争いの女神」エリスの言葉から知る
In Deeep 2023年12月5日

インターフェロン刺激因子のエリスは、上の記事を書いた後に知ったのですが、最近の英語版 Wikipeida を見ると、STING という名前が先に来ており、ERIS は「通称」となったようです。ご紹介する論文は、2009年のものです。

この STING については、コロナの初期の頃に知りました。あれは実は ERIS だったんですね。以下の記事にあります。

(記事)周博士の異常な愛情 または私はいかにして心配するのを止めて STING を愛するようになったか
IN Deep 2020年2月3日

パンデミック宣言前の懐かしい頃ですね。

ここから 2009年の論文です。


小胞体インターフェロン刺激因子である ERIS は、二量体化を通じて自然免疫シグナル伝達を活性化する

pnas.org 2009/05/26

ERIS, an endoplasmic reticulum IFN stimulator, activates innate immune signaling through dimerization

概要

私たちはここで、小胞体 インターフェロン刺激因子であるタンパク質 ERIS の同定と特性評価を報告する。

ERIS は強力な I 型インターフェロン刺激因子であり、非自己細胞質基質 RNA と dsDNA (※ 二本鎖DNA)の両方に応答して極めて重要な役割を果たす。

ERIS (STING または MITA としても知られる) は、小胞体膜のみに存在する。

小胞体の保持 / 回収配列 は、タンパク質を小胞体膜上に保持し、その完全性を維持するために重要であることが判明した。

ERIS は自然免疫チャレンジで二量体化(※ 2つの同種の分子などがまとまった分子)した。クーママイシン誘導性の ERIS 二量体化は強力かつ迅速なインターフェロン誘導をもたらし、ERIS の二量体化が自己活性化とその後の下流シグナル伝達にとって重要であることを示唆している。