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メモと雑記

ナースさんとの会話を思い出す

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最近は、吾妻ひでおさんの『アル中病棟』とか、中島らもさんの『今夜、すべてのバーで』とか、アルコール依存症関係の本ばかり読んでいるのですが、どちらも、基本的に「入院生活」のことが描かれているものです。

吾妻ひでおさんは精神病棟、中島らもさんは内科と、入院した科はちがいますが、「入院」というキーワードにふれているうちに、私は胃潰瘍で一度だけ入院したことがあるのですが、その時のことを思い出します。

私は、深夜の突然の大量吐血で東京新宿にある病院に緊急搬送されたことがあるのです。

2006年くらいのことで、今から十数年前のことですかね。

手術の後、緊急患者用の個室に運ばれました。

最初の日はあまり意識がなかったのですが、2日目の夜あたりから、担当のナースさんが夜になるとやってきて、会話をしていました。

それは、毎晩短い時間とはいえ、退屈な入院生活の中でのオアシスでした。

入院2日目には、意識は戻りましたが、大量の血液を失っていたために、起ち上がることができずに寝たきりでした。

でも、会話はできるようになっていました。

その日、担当のナースさんがやってきた時の会話は、後で病室でメモしたのですが、以下のようなものでした。

ナースさんは、おそらく二十代前半くらいの小柄な女性で、ささやくように喋る方でした。


 

「ねえ、ナースさん、オレさ、救急車で運ばれてきたので、ここがどこだかわからないの。ここどこ?」

「ここはね、新宿区だけど早稲田のあたり」

「ああ、そうなんだ。じゃあ、窓に見える光は新宿の?」

「この窓はね、特等席なんですよ。こっちからは池袋が見えて、こっちからは新宿が一望できるの。一等地ですよ」

「へえ……。でも、まだ立てないからその見事な風景見られないんだけどね」

「夜はここからの景色は本当に綺麗なんですよ」

「デートなんかにもぴったりかもね」

「ここは病室だし、デートはどうかな(笑)」

「でも、ナースさんって忙しそうで、デートとかあんまりできなそう」

「全然できないですよ」

ナースさんは外の景色を少し眺めていました。

「ねえ、ナースさん。この輸血のチューブはいつ取れそう?」

「さあどうでしょうね。輸血は多分、明後日までには取れるんじゃないかな」

「カテーテルはどうかなあ」

「それはわかんない」

「このカテーテルってのはイヤなもんだよね」

「そうですか?」

「うん。なんかこう生理的にすごくイヤだ。輸血や点滴はいいけど、カテーテルは早く取りたいよ」

「そんなに長くはかからないと思うよ」

ナースさんは私の身の回りの世話を終えた後、すぐ出ていくのかなと思っていましたが、しばらく私の雑談に応じてくれていました。

「オレさ、救急車で運ばれてきたから持ち物が何もないんだよ。本とか携帯とか。夜どうやって過ごそう」

「病人は寝るの!」

「でも暇だなあって」

「昨日あんなに大変だったんだから、そんなこと言ってちゃダメですよ」

「うん。眠る努力する。でも、お酒のまないと眠れないんだよね」

「ここで飲めるわけないでしょ」

「だよねえ」

 


 

このナースさんは、次の日からも、夜になると雑談に応じてくれていました。

こちらとしては、何しろ暇だし、何だか寂しいし、このナースさんには感謝していました。

しかしふと、

「こういうようなことで、ナースさんを好きになっちゃう患者もいそうだな」

とも思いました。

そういえば、私の親しい知り合いではないですが、演劇をやっていた人が舞台での事故で火傷をして搬送され、入院した際に、「その時、世話をしてくれたナースさんと結婚した」という出来事があったことを思い出しました。

「そういうこともあったしなあ」

とその時思いました。

入院3日目に緊急患者用の個室の入院室から4人部屋に移動となり、そこで病室を見てみれば、入院している患者さんたちは、オジサンとオジイサンばかりで、皆さん覇気がない(病気で入院しているので当たり前ではありますが)。

「あー、こんな人たちに好きになられても、ナースさんも迷惑なだけだろうなあ」

と思い、ナースという職業は大変だと改めて思った次第です。

その後、ナースさんの日々の生活サイクルのことや、給料のことなどを彼女の言葉から知り、「本当に大変なんだなあ」と、さらに思いました。「給料、今の3倍くらいあげてもいいんじゃないの?」と思ったりしていました。

その後、幸い入院するようなことはなく来ていますけれど、今度また入院するようなことがあれば、今度は担当のナースさんと結婚しよう(おいおい)。




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