23歳の頃ですから、もう30年前ですが、演劇のような公演を2度おこなって、「もう思い残すことはない」と思っていた頃、何の偶然か覚えていませんが、このフレッド・フリスというイギリスのギタリストの曲「ダンシング・イン・ザ・ストリート」を聴いたのでした。
Fred Frith - Dancing in the Street
これを聴いた途端、あまりにも感激して、
「この曲を流すためだけの公演をやりたい」
と思ったのです。
そして、1987年だか1988年だかの冬に、本当にこの曲を「50分間延々と流し続ける」という公演を実行したのでした。
内容は、「死ぬまで食べ続ける集団自殺」を描いた1973年のイタリアのブラックコメディ映画『最後の晩餐』のコンセプトと、レニ・リーフェンシュタール監督が、1934年の国家社会主義ドイツ労働者党の第6回全国党大会の様子を撮影したドキュメンタリー映画『意志の勝利』を合わせたようなものでした(今思えば、どんな内容だよ)。
そして、この「究極的な前衛馬鹿演劇」を観にきていた何人かの人たちと知り合ったことが、後の私の人生や交流関係に決定的な影響を与えて、結果的に楽しい20代を送ることができたのでした。
その人たちとは今でも付き合いが続いています。
そういう意味でとても思い出深い曲で、この曲と知り合ったことが私の人生を変えたといってもいいかと思います。今でもこの曲を聴くと、「青春」という言葉が思い浮かばれるのでした。
ちなみに、このダンシング・イン・ザ・ストリートはカバーで、このオリジナルは、1964年に、マーサ&ザ・ヴァンデラスという女性コーラスグルーブがリリースして大ヒットしたものです。
マーサ&ザ・ヴァンデラス/ダンシング・イン・ザ・ストリート(1964年)
それ以来、デヴィッド・ボウイなども含めて、多くの人たちがカバーし続けた名曲ですが、フレッド・フリスという前衛ギタリストによって、まったく違う正体不明の曲として世に出現したのでありました。
そして、そのわけのわからない曲を契機にして、私の人生の軌道は明確になっていたのでありました。その人生の軌道の指針は「なすがまま」でした。