(※) オミクロン亜種 BA.2 が主流になってきた場合、重症者はさらに増加するとみられます。その場合、ワクチンを接種した若い人たちの重症化が懸念されます。
[参考記事] 厚生労働省による広域火葬計画下の日本の「オミクロン後の社会」を、デンマークの国家機関データから考える (In Deep 2022/02/13)
「いきなり重症化」第5波の3倍…オミクロン株で死者が最悪ペースの理由
西日本新聞 2022/02/17
新型コロナウイルス流行の「第6波」の新規感染者数が減少傾向に転じる一方、1日当たりの死者数は第5波までを超える最悪ペースで推移している。
従来株に比べ軽症が多いとされるオミクロン株は感染者が圧倒的に多い上、高齢者施設などで感染が広がり、免疫力の低い高齢者の死亡につながっている。政府は一部地域でまん延防止等重点措置の期限を延長する方針だが、遅れてやってくる重症・死者数の「波」を抑える決定打は見当たらない。
国内の死者は1月下旬から右肩上がりに増えている。159人だった今月8日以降、連日150人前後で推移。15日は、神戸市が1カ月半の間の死者93人をまとめて公表した昨年5月18日の計216人を超える236人と過去最多となり、16日も230人と2日連続で200人を超えた。国内の新型コロナの死者は2020年2月13日に初確認されてから今月11日に累計2万人を突破した。
新型コロナは変異を重ねるたびに致死率は低下してきた。とはいえ、全国の新規感染者数の最多は第5波で約2万6千人だったのに対し、第6波は10万人前後に上り、絶対数の増加が死者数を押し上げている。
特に目立つのが高齢者の死亡だ。第6波では70代以上の死者が9割を占め、第5波の7割を上回っている。厚生労働省の集計では高齢者施設でのクラスター(感染者集団)件数は第5波のピークだった昨年8月で135件。今年1月10日~2月6日はその5・5倍の742件に上った。
オミクロン株は重症化しにくいとされる通り、第5波で2千人前後で推移した重症者数は最近は1300人前後に抑えられている。問題は高齢者の割合だ。大阪府の調査では、重症者に占める70代以上の割合は、第5波は18・4%だったのに対し、第6波は67・7%に急増した。
オミクロン株のウイルスはのど付近にとどまり、デルタ株のようなウイルス性肺炎を起こしにくい半面、高齢者らに感染が広がり、腎臓や呼吸器の持病が悪化して死期が早まるケースが相次ぐ。
医療ガバナンス研究所の上(かみ)昌広理事長は「感染を機に持病が悪化し、(食べ物などが誤って気道内に入る)誤嚥(ごえん)性肺炎で死亡する例もある。入院が強制される高齢者は寝たきりとなり、免疫力がますます落ちてしまう」と指摘する。
さらにオミクロン株がやっかいなのは、いきなり重症化する傾向があることだ。広島県の調査では、発症から「中等症2以上」へ3日以内に移行する人は第5波で約10%だったが、第6波は約35%に。上氏は「ワクチンの3回目接種の遅れが響いている。接種を進め、重症化しやすい人を早く検査し、治療につなげることが重要だ」と話す。
重症・死者数の動向について政府の危機感は強い。後藤茂之厚労相は16日の衆院予算委員会で、出遅れた高齢者施設の入所者らに対する3回目接種について、2月末までの完了を目指すと初めて明言した。
政府対策分科会の尾身茂会長は同委員会で「(重症者数は)数週間でピークアウト(頭打ち)する可能性があるのではないか」とした上で、「(減少曲線を)なるべく早く垂直にするため、懸命な努力を国、自治体、国民が協力してやるべき時期に差し掛かっている」と述べた。