(※)論文自体は、以下のものだと思われます。
中国人成人におけるお茶の消費と喫煙とパーキンソン病のリスクとの独立した共同の関連性
Independent and Joint Associations of Tea Consumption and Smoking with Parkinson’s Disease Risk in Chinese Adults
喫煙と喫茶がパーキンソン病発症を抑制
時事メディカル 2022/05/17
パーキンソン病(PD)は、中年期以降に発症しやすいがその原因はよく分かっていない。中国・Peking UniversityのJia Nie氏らは、喫煙および喫茶習慣がPDの保護因子となったとする前向きコホート研究の結果をJ Parkinsons Dis(2022年5月2日オンライン版)に発表した。
中国の50万人超を前向きに観察
喫煙および喫茶習慣がPDの保護因子となる可能性は幾つかの検討で示されているものの、前向きに検討した研究や両者の総合効果を検証したデータはほとんどない。そこでNie氏らは今回、中国人の慢性疾患を研究するコホート研究China Kadoorie Biobank(CKB)の参加者を対象に、これらの習慣がその後のPD発症に及ぼす影響を検証した。
対象は、2004~8年にCKBに登録され、ベースライン時にBMIのデータが欠損していた者を除く51万2,723例で、2017年12月末まで追跡した。
喫茶習慣については、頻度、日当たりの茶葉の量、種類(緑茶、紅茶など)、習慣開始の年齢などを質問。
①習慣なし群
②1日1回未満群
③毎日飲む群(さらに、茶葉の量が3.0g以下または3.0g超、その期間が25年未満または25年以上、種類は緑茶またはその他、に分類)
に分類した。喫煙習慣についても同様に、喫煙者には本数や期間を、習慣を止めた者からは禁煙期間などのデータも収集。
①習慣なし群
②たまに吸う群
③過去喫煙群、
④現喫煙群
に分類した。
対象の主な背景は、平均年齢が52.0歳、男性が41%、都市部在住が44.1%、男性の74.4%および女性の3.2%が過去または現在常習的な喫煙経験があり、現喫煙群ではそれぞれ40.5%、15.9%が毎日の喫茶習慣があった。また、過去喫煙群/現喫煙群のうち、男性では84.1%が喫茶習慣があり、45.7%が毎日飲んでいた。女性ではそれぞれ61.2%、16.0%だった。
お茶の葉の量や期間は影響せず
中央値で10.8年追跡した結果、922例がPDを発症した(平均発症年齢68.5歳)。 喫茶習慣なし群に対するPD発症のハザード比(HR)を、喫茶習慣別に算出すると、1日1回未満群では0.92(95%CI 0.78~1.09)と低下は見られなかったものの、毎日飲む群では0.68(同0.55~0.84)とリスクが有意に低下していた。
一方、茶葉の量(3.0g/日以下:HR 0.69、95%CI 0.54~0.87、3.0g/日超:同0.68、0.52~0.88)や喫茶期間(25年未満:同0.67、0.50~0.89、25年以上:同0.67、0.50~0.90)はPD発症リスクの低下に関連せず、緑茶(同0.70、0.54~0.91)よりもその他のお茶(同0.57、0.36~0.88)でよりリスクが低かった。
この結果は、性やベースライン時の背景によらず一貫していた。
喫煙は本数が多く期間が長いほど保護効果が強い
喫煙状況別については、習慣なし群/たまに吸う群に対するPD発症のHRは、過去喫煙群では0.96(95%CI 0.75~1.22)だったものの、現喫煙群では0.66(同0.53~0.82)とリスクが低下していた。喫煙本数が多いほど(1~19本:HR 0.73、95%CI 0.57~0.93、20本以上:同0.58、0.44~0.77)、喫煙期間が長いほど(30年未満:同0.79、0.57~1.11、30年以上:0.64、0.50~0.81)、禁煙期間が短いほど(6年以上:同1.12、0.86~1.47、6年未満:0.63、0.42~0.96)、リスクは低かった。
喫茶習慣と同様に、性やベースライン時の背景によらず結果は一貫していた。
両者の有意な相乗作用または相加作用は認められず
また、喫煙および喫茶習慣の状況別に、喫煙・喫茶ともになしを参照とすると、喫煙あり・喫茶なし、喫煙なし・喫茶あり、喫煙・喫茶ともありのHRはそれぞれ0.68(95%CI 0.49~0.94)、0.82(同0.68~0.99)、0.62(同0.49~0.79)といずれもリスクの低下が見られたが、両者の有意な相乗作用または相加作用は認められなかった。
Nie氏は、観察研究であるため因果関係は分からないとした上で、「今回の結果から喫煙および喫茶がそれぞれPDの独立した保護因子として期待できる可能性が示された。より大規模な前向き研究を行って、喫煙および喫茶のPDへの影響を検討する必要がある。両者がPDの発症抑制に寄与するのであれば、そのメカニズムを研究することでPDに関わる生理活性物質を突き止めることができる可能性がある」と考察している。