私が東京に来て以来、長く住んでいた東京の西荻窪という街は、ある意味で奇跡的な店が多いところで、たとえば…まあ 30年以上前の話ですが、「レンタルシップ」というレンタルビデオ店があったんです。
当時、私の住んでいたところから歩いてすぐの場所にありました。
このレンタルビデオ屋は私にとっては教師のような存在で、おそらく店主が本当に映画が好きな人だったのだと思いますけれど、普通のレンタルビデオ店のようにメジャーな作品は目立つところに並べられているのですが、マイナーやアンダーグラウンド映画の品揃えが異常に豊富でした(私は今でも、東京で一番だったと思っています)。
映画『ピンクフラミンゴ』で有名なジョン・ウォーターズ監督の最初期の映画のひとつ『モンド・トラッショ』(1969年 / 日本未公開)も、このレンタルシップには、なぜか日本語字幕入りのビデオがありまして、そういう感じで、いろんなものがあった。
アメリカとヨーロッパのカルト映画は、日本で販売されているものに関しては、ほぼありました。
欧米モノだけではなく、韓国映画の初期の頃の映画もたくさんありました。1986年の韓国映画『恐怖の外人球団』も、ここで借りて見ましたし、その後に大俳優となるソン・ガンホとチェ・ミンシクが共に脇役で出演していた『クワイエット・ファミリー』(1998年)というのも、ここで借りて見たものです。
インドネシアのカルト映画『首だけ女の恐怖』 (1981年)なんてのも、レンタルシップで借りたものでした。
モンティパイソンを初めて見たのも、このお店にビデオが揃っていたから興味本位で借りたことがキッカケでした。
レンタルシップは、もう本当にワンダーランドでしたよ。
でまあ、それはいいとして、ここで二十代の中頃くらいに借りた映画に『虐殺報道 ウォーゾーン』(1987年 / 原題:Witness in the War Zone)というのがあったのです。これは、アメリカ人ジャーナリスト(クリストファー・ウォーケンが演じる)がレバノンの内戦に赴いたことを描いたもので、1982年に実際にあった「サブラとシャティーラの虐殺」というレバノン軍がイスラエル国防軍(IDF)の支援を受けて、ベイルートで数千人の民間人を虐殺した事件にモチーフを得ているのだと思います。
この映画を見て初めて、
「パレスチナとイスラエルの憎悪の関係はこんなにものすごいものなのか」
と知った次第でした。
ショックを受けた映画でしたね。遠い中東ではこんなことが起きている。
虐殺報道(1987年)より

2023年のガザの問題なども含めて、妙に私自身が「パレスチナの話に対して熱をおびる」のも、この映画に原点があったかもしれません。
ちょっと日本人には理解ができない憎悪なんです。
まあ…二十代でいろいろと考えるキッカケになった映画ではありました。
それで、本来なら、「ご覧になっては」という感じで、DVD のリンクでも貼りたいのですが「ない」のですよ、DVDが。
アマゾンを見てみると、VHS の出品のページはあるのですが、VHS でさえ、「再入荷見込みが立っていないため、現在ご注文を承っておりません」とされていて、日本語字幕付きのこの映画を今見ることは難しいようです。
私は、かつて VHS テープなどを処分するときに、いくつかの映画について「この映画はあとで見られなくなるかも」と、パソコン等でも見られるように変換しておいたりしていたのですが、この『虐殺報道』も MP4 というパソコンなどで見られる形式に変換して保存しているお陰で今も見られます。
最初のほうに書いたジョン・ウォーターズ監督の『モンド・トラッショ』もそうしています。他にも数十本くらいあります。
実際、そういう映画は今では見られないものが圧倒的に多く、何をどうやっても見られない映画というのは、いくつもあるのですね。
ところが、今日、何となく YouTube を検索していたときに『虐殺報道』がフルムービーでアップロードされていることを見出しました。もちろん、字幕はないですが、 YouTube で字幕は無理やりつけることはできます(かなりひどい字幕です)。
以下にあります。ただし、この YouTube 動画では、ラストのほうの虐殺の後のシーン(死体だらけ)では全部ぼかしが入っています。そうしないと、アップできないのでしょうね。
Witness in the War Zone – ULL MOVIE
こうなってくると、私などは存在を軽く見ていた YouTube も結構貴重なメディアなのかなとは思いますね。
ちなみに、先ほど書きましたジョン・ウォーターズ監督のモンド・トラッショも原語で全編アップされていました(ただし、この映画はわざわざ時間を割いて見るものではありません)。
この映画の日本語字幕版のラストシーンをずいぶん前にアップしたことがありましたが、このあたりで十分です。
Mondo Trasho (1969) ラストシーン
おそらく、この映画を日本語字幕版で見た人はほとんどいないと思うのですが、西荻窪のレンタルシップのおかげで見ることができました(この映画を見ること自体は時間の無駄ですが)。
レンタルシップが今あるのかどうか不明ですが、私が西荻を出た十数年前で、すでに DVD レンタルとなっていて、店の規模もかなり縮小していましたので、今はどうなのですかね。もうレンタルの時代ではなくなってしまいましたので。
ヨーロッパの昔の名作映画もここで借りてまとめて見ました。
30年以上前のオシャレでもなんでもなかった西荻窪は、ご近所の奇跡の店がたくさんありました。ちなみに、当時の西荻で一番、気の狂っていた店主の店は…(そっちの話はいいから)。
そうですか。