ヨーロッパの天然ガス価格が再び過去最高を更新

 


欧州ガス価格、過去最高に ロシア産ガス輸送が要因

ロイター 2021/12/22

欧州のガス価格が21日に過去最高を記録した。ロシア産ガスをドイツへ供給するパイプラインの流れが東向きに変わったのが要因。ロシア政府はこの動きに政治的な背景はないとし、ドイツのガス購入大手2社はロシア国営天然ガス企業ガスプロムが供給義務を果たしているとの見解を示した。

ロシア産ガスを欧州へ送る主要ルートの一つ、「ヤマル・ヨーロッパ」パイプラインの西向きの流れは18日から減少し、21日未明に停止。その後、ガスが流れる方向が逆転したことがドイツのパイプライン管理会社、ガスケードのデータで示された。

西側諸国の政治家や産業界の専門家の一部は、ウクライナを巡る政治的緊張やノルドストリーム2の承認の遅れを理由に、ロシアが欧州へのガス供給を抑えていると非難している。ロシアはその関連性を否定している。

ロシアのペスコフ大統領報道官は21日の記者会見で、ヤマルの流れとノルドストリーム2との関連についての質問に「(ノルドストリーム2との)関連は全くなく、これは純粋に商業的な状況で起きている」と答えた。

トレーダーらによると、フランスの多くの原子力発電所が閉鎖されて発電所の需要が高まっていることや、天候が寒くなっているのを背景にガス価格が高騰している中で、今回の事態が起きた。

欧州の指標であるオランダのガス前月卸売り価格は一時、16%超上昇して1メガワット時当たり171.40ユーロ(193.46ドル)と過去最高を記録した。同じような英国のガス契約も英国で用いられている単位、1サーマルユニット当たり4.29ポンド(5.68ドル)と過去最高を付けた。

エナジー・アスペクツの欧州ガス部門責任者、ジェームズ・ワデル氏は「今冬、欧州には貯蔵の余裕がほとんどなく、例年に比べて輸入に大きく依存している」とし、「さらにガスプロムは従来、欧州への供給量の約20%をポーランド経由で出荷してきたが、今年はこの流れが安定せず、欧州が実際にロシアから受け取るガス量について不確実性が高まっている」と指摘した。

ガスプロムはコメントに応じていない。西方向への流量が減少していた20日には、顧客の要望に応えていると説明していた。

11月にはヤマル経由のガス量と方向が、ポーランドへの東方向と西方向で交互に変わる状態が続いていた。

ドイツでガスプロムからガスを最も多く購入しているRWE、ユニパーのそれぞれの広報担当者は、ガスプロムはガスの供給義務を果たしていたとコメントした。

ヤマルのパイプラインからガスを調達しているガスケードは21日、要望に応じてガスを輸送しているとして「状況に応じて、どちらかの方向により多く輸送するのか指示を受けている。それが方向を変更する理由だ」と述べた。