タニヤの日本人クラブはいわゆる「カラオケクラブ」という名称の高級クラブが多いのですが、これはどうしてかというと、言葉の疎通が自由に行かない場合、カラオケに逃げるしか、お客、ホステス双方共に手はないからです。
しかし、この「a Doll」にはカラオケがあることにはあるのですが、基本的にピアノラウンジといった感じの音楽が静かに流れるお店で、カラオケでギャーギャーと騒ぐような雰囲気ではありません。
確かに会話で楽しむにはナットさんとの疎通には多少の不便はあります。しかし、私はカラオケなどに頼らず、この子と楽しもうと決めました。何しろ、ナット
さんは常に笑顔を絶やさない、本当に人をいい気分にさせてくれる女の子で、私はホステスさんとしての彼女を一気に気に入ってしまったからです。
さて、どうすれば、意志疎通ができるだろう。
もちろん、片言なら日本語は通じます。
感じとしては、最初は
「昨日、バンコクに来たんだよ。東京からなんだけどね。まあ、やっぱりバンコクは暑いよね」
という話をしているのですが、それがあまり通じていないということに気づき、次第に、
「昨日 バンコク 来た 東京 バンコク暑い」
という会話になっていきます。
最初はこれは不便かとも思っていましたけれど、慣れれば、これはこれで十分に楽しいし、下手に助詞などつけない方が通じやすいことにも気づきました。
私としては、ナットさんに笑ってもらいたいと思っていました。
そして、その最終的な方法として、私はどんどんアクションが大きくなっている自分に気づきました。
万国共通の笑いネタというものはいくらでもあります。物真似、変な顔、バカのふり。
こういうことをもうヘトヘトになるまで私は続けていました。
そのうち、簡単なタイ語なども教わり、私は即興で下手なタイ語で冗談なども言い出したのですが、私の下手なタイ語が彼女たちの琴線に触れたようで、最初は
クスクスと笑っていたナットさんやアンさんも次第にゲラゲラと笑いだし、ナットさんに至ってはついに腹を抱えて笑い出しました。
その合間にも私はちゃんと、
「酒 もっと 注ぐ 水ダメ 氷 入れる ウイスキー もっと 入れる」
というような要求もちゃんと満たしつつ、1時間経つと、アクションも大きかったせいか、次第に泥酔していく自分を感じていました。
ついに、私は
「あなた 酔っぱらい」
と言われるまでの立派な酔っぱらいに成長しましたが、このあたりからのことはよく覚えていません。