【ナットさんとの出会い】
マネージャーは日本人の中年の男性で、もともとは日本でパチンコ関係の仕事をしていたのですが、2年前にタニヤにマネージャーとして招かれたのだそうです。
そのマネージャーに案内されて、私とSくんは店内に入りました。
ここはタニヤでは規模の小さい店だということでしたが、とてもきれいな作りで、西東京あたりの安キャバとは装飾も雰囲気もまったく違います。私は日本の高級クラブに行ったことはないですが、多分、こんな感じなのだと思います。
この時の服装は私は長袖シャツにジーパン、Sくんに至ってはTシャツ姿でした。
店の作りとはあまりに違和感のあるふたりであったことは否めないと思います。
ちなみに、店はガラガラでした。というか、入店した時点では客は我々だけでした。
タニヤは日本人の経済の上に成り立っているので、日本の景気が悪いと、必然的にタニヤも不況に陥るというジレンマがあります。
私たちは手前のボックス席に案内され、そこでチーママから店のシステムの説明を受けました。
その後、「では、こちらへ」と、我々をどこかに連れていこうとします。
「どこへ?」と私が尋ねると、
「女の子を選んで下さい」とチーママは答えました。
そうです。
タニヤの日本人クラブは、日本のクラブやキャバクラのように店側が勝手に選んだ女の子を客につけるのではなく、女の子の雛壇というか、待機席に行き、自分で自分につく女の子を選ぶのです。
「なるほど、それは合理的だ」と私は思いました。
待機席には十数名の女性がいました。
かわいらしいドレスがユニフォームです。
Sくんが「日本語喋れる人はいますか」と言うと、半数ほどの女の子が手を挙げました。
私も日本語を話せる女性の方がいいとは思ったので、その中から選ぶことにしました。
こういう場合、日本人は照れて「誰でもいいよ」とか言ってしまうことがあるらしいですが、絶対に真剣に選んであげた方が本人たちは喜ぶと思います。相手は日本人ではなく、並々ならぬプライドを持つタイ人女性なのですから。
Sくんは長い黒髪の美少女を選びました。
私は顔自体よりも、なんとなく優しそうな表情をしていた赤毛の女性を選びました。
そして、この赤毛の女性との出会いが後々までいろいろと心に響くことになっていくのでした。
Sくんの選んだ黒髪の美少女は非常にスリムなスタイルの素敵な女の子で、名前はアンと言っていました。
私の方の女性はナット、あるいは聞きようによってはナッツという名前の人でした。いわゆる源氏名でしょうが、覚えやすかったのは助かりました。
昨日のパッポンの美少女の名前をきいたときに「ファーラーサーチャットワイナー」みたいな(これは比喩です)非常に長い名前を言われて困った経験をすでにしていたので、アンとかナットなら忘れることもないでしょう。
「日本語の喋れる人」という問いに対して手を挙げたわりには、私のナットさ
んは実はあまり日本語を理解しませんでした。英語はさらにダメでした。Sくんの選んだアンさんはかなり達者な日本語を操る人で、これはタニヤでの商売歴の
差であるようで、アンさんは現在22歳で、4年間、タニヤで働いているのだそうです。
私のナットさんはキャリアは聞きませんでしたが、それほど長くはないようです。